蒼いオカリナ
意を決した表情で彼女はこちらに顔を向けた。
「あなた達はゼルダ姫……私に会いたいんですね」
『………はい』
きりっ、と隠していた王女の気品を出すゼルダ。
あのドレス姿とは違うこの表情の彼女にどこか新鮮さを感じられた。
それに倣い自分も敬語を使う。
「ハイラル城へ向かいたいのなら一般では招待状でも無い限り城に入るのは不可能です……
ですが、壁を登ってくと簡単かも知れませんね」
私もやりましたし。
くすり、と笑いながら小さく呟く姫。
蔓を伝って下りてくお転婆ゼルダ……。想像出来てしまうほど、彼女の第一印象が出会う前と違う…。
脱出経路を知ったインパさんは心配かけないで下さい…と言わんばかりのため息を付いた。
苦労しているようだ。
『ハハ…(頑張ってインパさん……)、でも、それを言ったら……』
今回の件もあって少なからず自分達が精霊石を見せたあと、もう蔓は取られて兵士も厳重に配置され、町へと行くのは難しく、寧ろ不可能になるんじゃ……。
「良いんです………。
それに気長に待つほどもう時間が無いのですから………」
暗くなる表情。
先ほどのゲルド族との問題だろう。
人の笑顔が賑わう平和なハイラル。
しかしガノンドロフ達の勢力。
今は表向きには平和に進んでるゲルド族とハイラルとの交渉。
今まで争ってきた相手が下手に出て傘下に入る……と。
怪しいがガノンドロフが周りの人間をうまく巧みに言いくるめたのだろう。
私が知っている7年後の展開へと導く為に。
確か彼女は予知夢を見れた。
もうすぐハイラルが危うくなると。
「外に出ることすら危うくなるでしょう……でも、いざという時は権力を使いますから(ニコニコ」
爽やかな表情を浮かべながら笑うゼルダを見て冷や汗が滲む。
爽やかに権力を振りかざしていそうだ。
『………ソウ、ガンバッテ』
そこ。何をとか聞かない。
敬語が無いとか片言はご愛嬌だ。
心なしかインパさんも胃を押さえている。
きっとキリキリ痛むのだろう。インパさんは胃痛持ちか。
ファイト、インパさん。
私、応援してるよ。
「あなた方に時のオカリナを貸しますね。
きっと私の元へと導いてくれるでしょう」
と、手のひらに時のオカリナを持たせるゼルダ。自分なんかに持たせて良いのかと聞いたがなら大丈夫だと返された。
そんなこと聞いてくる人は盗みなどしないということだろう。そんなに簡単に信用して良いのだろうか……。
インパは何も言わない。
「無理なようならインパを向かわせますので」
「では……失礼する」
これ以上は無理なのか(胃的にか精神的にか)インパは彼女を連れて早々に去っていった。
サリアといい、あの子といい………この世界の可愛い女の子はだいたいああなのか。
笑顔で相手を脅すってコワイ。
コワイよ。
頼む全員あんな何やら腹の内に黒いのを飼ってないと……
せめて他の子達は普通だと……背後にナニかを背負った笑いをしないと…
そうでないと誰か言って!!(切実
噴水の場所で呆然と立っていると逃がしたのか少々悔しそうに帰ってきたリンクがきた。
〈あれ?あの子は?〉
『………ああ、帰っていったよ』
素敵な笑みを浮かべながら。
リンクは手に持っているオカリナを目敏く見つけた。
「あれ、そのオカリナ……」
『ああ……、うん、あの子が置いて行っちゃったの』
「(?)ふーん…」
〈どうする?このままお城行く?〉
『いや、明日にしよう』
リンクも少し疲れてるだろうし。
『って、どうしたの?凄いボロボロだけれど……』
「あ、いや……その」
《リンク、あの人達に喧嘩売っといて木箱へ投げられたの。
その隙に逃げられるし木箱から体が抜けられない状態だしカッコ悪いったら》
「な、ナビィ!!」
『全く……深追いするから。
……リンク、とりあえず風呂入りなよ』
「えぇ〜っ!?」
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