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宵闇の刺客





苦笑いする目の前の女の子は本当は
……王女。


外に出ることは身の安全の為にと一方的に禁じられた、いわゆる籠の中の小鳥だ。

先ほど呟いたことはきっと小さい背中に掛かる重みを一時だけ忘れる一つとして成りたかったものだと思う。

思うだけならいくらでも出来る。

けれど籠は強固なものだった。

窓から見えたおめかししておしゃべりしている普通の娘達がゼルダにとっては羨ましかっただろう。
それでも、一度だけでも外に出たくて兵士達の目を掻い潜り町に出た。



『名前………教えてくれないかな。私はユキセ』



お互い名前を知ればきっとまたこうやってしゃべれるかもしれない。
笑ってボムチュウボウリングとか出来るかもしれない。
願うだけではそれは叶わないのが世の中だけれど、……それでも。



「オレはリンク!また一緒に遊ぼう!!」



ニカッと女の子に微笑むリンク。


『人生は長いんだからさ、またこんな機会がきっとあるよ』



自分も、ホントは此処には来られない存在な訳だけど、運が良くって、偶然と奇跡が重なって今此処にいることが出来るんだと思う。

そう、そうなのだ。


彼らは動く。


息をする。


笑ったり、泣いたりもする。


そして、


生きている。


生きていれば、どんな奇跡だって起こせる。



優しく頭に手を乗せて、頭を撫でる。
子ども特有のきめ細かな、細い髪が手に馴染んだ。くすぐったそうな、少し驚いたその表情。


そして私とリンクの言葉にゼルダはふわりと微笑んだ。



「………うん。

私の名前は………」



遠慮がちに話し出す。

多分、正体を明かすことによって自分を見る目が変わるのかもしれないのが恐いんだろう。

けど、辛抱強く待った。
その小さな口から名前を聞くまで。



* * * *




一瞬、空気が変わった。


ざわりと騒ぎ出す何かを感じて思わず辺りを見渡す。


何?何が…………。



「……姉ちゃん?」



リンクが不思議そうな表情で呼び、うつむいていた女の子も顔を上げた。


複数の何かが物凄い速さでこちらへと駆け抜ける音。


口許を布で隠し二刀の曲げ刃の剣を持った女の集団。

麦色の肌に丸い耳、髪を一つ結びにした鎧を着ないアラビアンな軽装の独特の姿をしていた。


「な、なにっ!?」



その正体はゲルド族だった。


その集団はちょうど人のいない町の広場にいる自分達にその刃を向けたのだ。

いきなり私達を取り囲むゲルド族。
数は4、5人と少ない、やけに。


ナ、ナイスボディ!!くびれとか胸とか!
ちょっと羨ましい。って、そうじゃ無かった。今危機的状況ですねはい。
目の前に曲がった形の剣を見て刃が薄く小さなカッターナイフでは戦えないな、と思った。



いきなり私達を取り囲むゲルド族。
数は数人と少ない、やけに。
ナ、ナイスボディ!!くびれとか胸とか!
ちょっと羨ましい。って、そうじゃ無かった。今危機的状況ですねはい。
目の前に曲がった形の剣を見てカッターナイフでは戦えないな、と思った。



「な、なんだお前ら!!」



剣を抜き警戒するリンク。
しかし、子どものただの威嚇としか見ていないようで視線を辿ると、良い服を着た女の子だけを見ていた。



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