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砂漠の王





屋根の上から何やら人だかりができてるのを見つけた。

うん、なんかキラキラと妖精みたいなものが助けを呼ぶように高い所でくるくる飛んでるのは気のせいだと、良いネ。



《ユキセー!!》



『聞こえない聞こえないあーあー全然聞こえないよー』



目を逸らして耳を塞ぐ。
あーもう、面倒事を起こしてるしー……。
このままにするのも宝石を取られたら困るので渋々屋根から降りて騒ぎの場所へと向かった。

が、何者かに突き飛ばされ地面へとダイレクトアタックしてしまった。
い、痛っ……!!てかメガネがどこかへ飛んでった!!



「おい見つけたぞこの糞ガキ!!」



屋根に上っているときにみつけたのだろうか、声からして先ほどの男がこちらを酷く睨み付けながらこちらに歩いてきた。



『うわっ……まだ捕まえようだなんて思っていたの?』

「お前を売れば金になるかもしれねぇからな!!覚悟しろ!!」



そう言ってこちらに手を伸ばそうとして咄嗟に身を構える。
けれど男はこちらではなく、ある一点だけを見つめて、更に顔を青くだらしなく口を開け震えていた。



「ア……アンタは……ぎゃあっ!!」


凄い何かと何かがぶつかった音と、いつの間にか目の前の男が庇った腕と腕の隙間から見える視界から消えていた。

腕を降ろして男の行方を見ると、火傷のように爛れた腕を庇いながら這いずる男がいた。



「ひっ、ヒィっ……!!」

「早く消えろ、ゲスが」



その背後からによる声に焦って転けながら逃げていく男をただ見つめるだけしか出来なかった。
何で………?
というか……後ろ?



――ゾクッ!!



急に背後の存在がとても恐ろしいような予感がして全身に悪寒が走った。
後ろを振り向きたくはなかった。
無かったが…………。

ぎこちなく震えながら首を背後へと向ける。

イヤな汗が背中からでつつも、好奇心の様なソレに逆らえずゆっくりとだが向いてしまった。


『………っ!!』



そう、見てしまったのだ。
背後に存在する砂漠の民の王を視界に。
視界がボヤけても分かってしまった。



「……フン、なかなか見ない黒の相貌か」



まるで石像のように固まってしまい、動けない。目はずっと王を見ていて、もし逸らしてしまったら首根っこを掴まれて絞められるのではないかと思うほど。
リンク、今大ピンチです。

しゃがみこみ黒い肌の手が髪に触れるや否や、反射的にその手を払ってしまった。



『あ……、先ほどはありがとう、ございます。な……何で……私を助けたんですか……?』



つい口を滑らせ変なことを聞いていた。
死亡フラグ立ったかもしれない。

目の前にラスボスがいたとしても聞きたいと思ってしまった。あの盗賊王と呼ばれ、ハイラルを支配せんと画策している男が一介の娘になぜ救いの手を差し伸べた?
気まぐれでも知りたいと思ってしまった。ヤバイ、思考が可笑しくなってる。



「フン、普通ならあの男の様に逃げ出すものを……。小娘、俺が怖くないのか?それとも恐怖で動けないか」



うんともすんとも言わない……いや、言えないしそれに視力の悪さにこんなにも幸せだと思ったことはない。こちらの態度に満足したようくつりと笑う。

いや、怖い。

さっきのあの男が負ったあの変色し爛れた痕。
……あれってこの男がやったんでしょ……?

笑みが深くなる度に冷や汗が大量に出る。
蛇に睨まれた蛙の様な気分で密かに生唾を呑み込み相手を伺う。



「この俺をゲルド族の王と知ってかは知らんが良いだろう。教えてやる」



ニヤリとその獲物を狩るような瞳孔の開いた鋭い瞳が笑いながら問いに答える。



「一つはただの気まぐれだ……俺はハイリア人が嫌いだからだ。特にあんなゲスはな。
神の声を聞くというが奴等が聞こえるのは騒音だけだろうな」

『は、ハイリア人って……私だって……』

「お前の耳はハイリア人とも他の種族とも違うな」



そう言われ、心臓の鼓動が大きく高鳴った。
なぜ分かったのか……?自分にもいつの間にかだがハイリア人の耳を持っているはずだ。耳の形だけでそう言っているのかもしれない。



「お前の髪、瞳は一部の好き者が好む色だ。こんな暗い場所に来るなど自ら火に入る虫の様なものだ。
せいぜい狙われないようにするんだな」



そう言い放ち、自分を通り過ぎて曲がり角へと消えていった。

カチャリカチャリとガノンドロフの鎧が揺れる音が聞こえなくなるまで、自分はといえばずっと地面に座り込んだままだった。

数分してやっと喋れるようになり、出した一声は



『……ラスボスと喋っちゃった』



自分でも呆れるばかりだった。



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