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ハイリア人の耳





『今は何の季節ーー!!!??
暑い!!季節の精霊に文句言ってやる!!!』



そう叫ばずにはいられないほどに体力が無い中、陽はさんさんと輝きまくっていた。

旅の始まりなら別に春の気候でも良かったじゃないか!

遠くの城が蜃気楼ではないかと思うほど全然近付いてる感がしないのだ。



「姉ちゃんが壊れた……」

《けれど本当なにもないね……あ、見て!》



ナビィが指した方向には荷馬車が走っていた。

遠くて解らないが多分あんなに木箱を積んだ馬車を使うなんて牧場か知らない農場くらいだろう。
……だとしたらタロンさんかな。




『す……すいませーん!!』

「ん、なんだだーよ?」



この独特の喋り方、まさにマリ、ゴホン……タロンさんだ。
良かった、もしかしたら乗せてくれるかもしれない。


『あそこのハイラル城下町まで乗せてってくれませんか?』

「ハイラル?いいだーよ」


即OKしてくれた。
優しい人だ。ホッとして膝を着いたら、
すっ、と目の前に2本の瓶を突き出された。



「良かったらこのロンロン牧場自慢の牛乳もあげるだーよ」



と二本牛乳をくれた。
良い人だ…………!!

自分達を乗せた馬車は停まらせていた馬を走らせ、ハイラル城下町へと向かった。



「ぷはぁっ……おいしい!!」

『さすがロンロン牧場、まろやかで後味さっぱり!』

「姉ちゃん知ってるの?」

『まあね、有名だし』



というか、牧場と言えばロンロン牧場しか知らない。

太陽が西へ傾いていてちょうど真ん中あたり。馬車は順調にハイラル城下町へ向かっていた。
何とか間に合いそうだ。



『あ、川だ』



馬車が走っている道に川があった。

さらさらと緩やかな川であっちの世界とは全然違う綺麗さがあった。
水面の奥に魚が群れをなして気持ちよさそうに泳いでいた。



『(なんかホッとしたなぁ……。こっちはあっちの様な科学廃棄物の汚さが無いから)』



自分が映りこむか映りこまないかの距離である川を眺めながら思った。

水底が見えるほどに水は澄んでいて魚の群れが流れに逆らってゆらゆらと泳いでいる。
この水は恐らくハイリア湖へと流れ着くのだろう。


馬車からは荷物と頭だけかろうじて見え、風になびく髪の毛を見ていた。


『(何だか髪の毛が前より伸びて来たな……
耳も前よりも長く見えて…………

……長く?)』



確かサイドの髪の毛は耳が隠れるくらい長かった。


それに今はゴムを解いていて結んでないし

普通なら更に耳は髪の毛に隠れる。


そぉっ、と恐る恐る耳を触る。


あっちの世界では耳は

丸かった


……はず…。



『(え、いや、そんなまさか)』



壊れ物を扱うかのように水面に映る自分を見ながら耳に恐る恐る触る……。
もしかしたら目の錯覚かもと思い……。


プラスチックではない生の肌……。
尖んがってる。
まごうこと無き尖り方だ……。

誰か寝てる間耳に○んがりコーン付けて無いよな。
そんなことしたらコブラツイスト喰らわせてやる。
……できないけど。


何度も何度も触り続けていたけどそんな粘土や樹脂などとは違って。

リンクを見れば自分のはやや後ろへと向いていて、尖り具合は……まあともかくリンクと普通。
耳の長さはは一回りくらい小さい。
エルフ……エルフ耳になっちゃった。




『(マジか。マジなのか……なんで、)』



ショックで頭がぼーっとして回らない。
なんか、あっちの世界との繋がりが一つ無くなった気がする。
まあ………、ずっと帰れないって訳じゃなくていつかは帰れる(って信じてる)だろうから良いかな………。

………耳は隠して帰ろう。




『(でも何で耳が………ていうかいつから……?)』




髪の毛洗う時とか耳触れるけどそんとき丸かった……と思うし…。
あー……どうしよう顔青ざめてないかな。
うんうん唸っているとリンクが呼んだ。



「そういえばお姉ちゃんって此処に住んで………お姉ちゃん?」


『んー…うーん……』



けれどそんな事など気がつかず、残念ながらリンクの声は尖んがり耳には届かなかった。



「………どうしたんだろ。川を見ながらしきりに耳触ったりして」


《………さぁ、腫れ物でも出来たのかな》



馬車の車輪が石にぶつかる衝撃で落ちそうになるまでその状態は続いた。



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あきゅろす。
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