無謀な冒険
『ナビィもいる?』
《……ナビィ食べる口ないヨ》
リンクに飴の他に普通のビスケットやグミを与え、ハムスターみたく詰め込む姿に癒しを感じた。
まだまだ飴やその他の菓子はあるし、妖精が物を食べるところを見たかったのでそう言われては諦めざるを得ない。
『妖精って何を食べてんの?』
《ナビィたち妖精はキレイなもの、例えばこの清んだ空気とか光とか、そういうのを栄養としてるの》
『へぇ……じゃないと駄目なのかぁ』
《駄目と言うか…まあそれは大妖精サマとかぐらいだけど。
ナビィみたいな小さい妖精ならそれがなくても普通のもので生きていけるよ》
『ふうん……霞食べていけるんだ』
森に住んでいる妖精だからか植物みたいだなと歩きながらそんな事を思った。
じゃあ、ナビィの食費は考えないでも多少平気かな。
人間界の食べ物は必要としなさそうだ。
《それに闇の力が近くに無い限りナビィ達の食べ物なんて其処らじゅうに沢山あるヨ》
『常に食べれる状態か……
ナビィ太らないでね』
《ちょっと、どういう意味ヨ!》
基本この世界の空気は綺麗だから妖精は住みやすいんだろうな。
排気ガスなんて人間の身体にも悪いのが充満してるこっちの世界にいたら山にいない限り死んじゃうかも。
* * * *
城はシルエットは見えるけどまだまだ遠く、歩きでもまだ半日くらい掛かりそうだ。
門が閉まる迄にはなんとしてもたどり着きたい所だけれど無理そう。
『リンク、そろそろ火起こしと今日食べる食料取った方がいいかも。城下町は夜になると門が閉まっちゃうから』
「そっか……。じゃあ今日はここまでだね」
《ナビィ何かないか探してくる!》
高いところも自由に飛べるナビィはその体を活かしてひゅんっと素早く飛んでいった。
『……リンク火付けられる?』
「うん。薪を探しに行こう!」
『分かった』
リンクが火を付けられて良かった……火打石とか一応あるけれどやり方が分からないからね……。
ナビィも木の実のありかを教えてくれたり、比較的浅い川で何とか魚を一匹獲れたので半分ずつに分け合い野宿をとった。
時間の流れもあっという間ですでに世界は月が天辺まで昇ろうとしていた。
《ダイジョウブ?もう寝てもいいんだよ?ナビィがちゃんと見張ってるから》
『うん……ちょっと眠れないからもう少し起きてる』
隣ですやすやと眠っているリンクが視界に入るなか、自然以外何も囲まれていないなか眠るのがどうしても出来なかった。
そもそも野宿なんて生まれて初めてだから。
短い間ながらリンクの家はちゃんとした家の中だから多少平気だった。
けれど魔物が近寄らない為に焚火をやったとしても、睡眠をとるはずのナビィも頑張って起きてくれてたとしても、
眠っているうちに魔物が襲ってきたらだとか、ゴーマみたいな強い魔物が現れたらどうしようとか考えてしまう。
その恐怖感でなかなか寝つけなかった。
火が途中で消えてしまわないように薪を火にくべる。
世界は真っ暗で、静かに虫の鳴き声と時折カラスの間延びした鳴き声。それときらきらと空に小さく輝く星達のみだった。
『私の町じゃこんなに綺麗じゃ無かったなぁ……』
《え?何か言った?》
『……ううん、なんでもない』
あっちとこっちを比べるのは何だかいけない気がした。
だけれど……やっぱりこっちの方が自然も豊かでとても綺麗なところ。
弟みたいな子もいて、幻想的で、優しい世界。
自分が果たして元の世界に戻りたいのか分からなくなってしまいそうになる。
そんな思考から逃げるように膝に顔を埋め、ただ無心でずっと眠りを待ち続けた。
そんな自分の様子を妖精が見ていたのを知らずに。
* * * *
「歩いても歩いても………」
『道ばかり………』
《若者なんだから頑張って!!》
ナビィって何歳なんだろ……。
なんか年寄り臭い……。
結局朝陽が昇るまで眠れず、疲れが残る体での旅の再開となった。
そこまで長距離の道を山以外歩いたことのない自分にとってコキリの森からハイラル城まで行くのには重労働だった。
山を登っても体力なんて元からないからいつも最後の方だったけどね……。
遠足ってなんでいつも山登りなんだろうね……。
遠足じゃなくて登山て最初から銘打っておけばいいじゃないか……いつも山しかなくて泣きたくなるわ。
脚は痛いし、そろそろ生まれたての小鹿のごとく脚がガクガク震えそう……。
ブーツはヒールのあるものじゃないけれどけっこうクる。
『脚がー……』
「もうくたくたぁ……」
日陰のない平原では太陽の熱さがモロに来て体力と水分だけが削られる一方だった。
出発した日からもう体力切れとか……最悪。
食料とか体力のことちゃんと頭に入れておけば良かった……。
このまま誰にも知られず死んじゃったりとか……恐い恐い。
それだけはかんべん。
.
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!