旅立ち
「姉ちゃん……」
『…ん?どうしたのリンク』
顔を下に向けながら
きゅっと少ししわくちゃになるくらい強く服をにぎりしめて来た。
「……一緒に着いてってくれるの?」
『………うん、勿論に決まってるじゃん。
寧ろ出来るのはそれくらいしか無いし…』
「へ?最後の方なんて…」
『ん?なんでもない』
自分は漫画のような主人公と違って、超人的な力はもってないから。
剣だってろくに扱えないだろう。
良くてサポートくらいしか出来ない……。
デクの樹から木片を切り取り剣で削る。
原作ではルピー集めが大変だったなぁ……。草を伐ったり岩を持ち上げたり……なんでそこから出てくるのか不思議だった。
ゲームと現実の差はシビアなものだ。
あ、そうだ……此方も準備しないと……。
リンクの家から必要な物だけをバッグに積める。
毛布やら、飴やらの食べ物、あと武器。
元の世界での硬貨は売ったらお金になるかな……。
さすがに保険証は失くさないようにしないと……元の世界に帰った時大変だ。
もう戻らないであろうリンクの部屋の周りを見渡す。
前にあげたクレヨンを使ってリンクは沢山の絵を描いていた。お世辞にも上手と言えない子供特有の絵は、カラフルに色付けされていてサリアや自分、コキリの皆にデクの樹が大きく描いてあった。
部屋の隅、分かりにくいところにリンクとミドが手を繋いで笑っている絵があった。
それを見てくすり、と笑みが零れる。
もう此処には戻れないかもしれない。
でも、また戻れたら………。
* * * *
「出来た!うん、よしっ」
リンクはもう盾を完成した。
こういう造形のアイディアの才能がぴかいちなリンクはここでも才能を発揮し盾と十分に言えるようなものを作った。
「よろしくな、ナビィ、姉ちゃん」
《行こう、リンク!ユキセ!》
『……うん!』
「……行くってお前どこ行くんだよ……俺たちコキリ族は森の外に出たらシぬんだぞッ!!」
外の方向から振り返ったリンクは自分の覚悟を話した。
「俺……外の世界を見てみたいんだ……どのくらい広いのか、何があるのか、自分の目で」
其れを聞いたミドは少し悲しげな顔をした。
本当はどちらとも仲良くしたいんだろうな…でもどちらも意地っ張りだから(片方はプラス見栄っ張りだけど)
「………っユキセ!お前もなんか言えよ!!」
こっちに来るか。
てか自分も外へ出るんだから説得したって意味無いでしょうが。
まあ言うとすれば……。
『……今のリンクには必要だと思うんだ。何よりリンクが望んでる訳だし。此処にずっといるとリンクはデクの樹の使命を果たせないし……、
なにより、リンクがリンクじゃなくなっちゃう……かな』
ごめんね……ミド。
「ユキセもリンクも行っちゃうの?」
リチェやリカ達がこちらへ出て、目を伏せ悲しそうな表情で聞く。
「あたし達ね、外の話聞けて良かったよ」
「皆と遊んだりして楽しかった。
ミドが言ったとおりあたし達、外に出たら生きていけない……シんじゃうから。
それがコキリの掟だから……。
だから見たことも無い世界に足を踏み入れた感じがして、楽しかった……。
だから、待ってるから!
またお話聞かせてよね!歌もね!!」
『……うん!分かった』
「早くデクの樹サマの使命終わらせてよリンク!」
「じゃないと二人とも呪うからね!!」
とリチェとリカはリンクに向かって叫んでいってしまった。
「だぁーーー!!!外野は黙れ!もうさっさと早く行けよ!!
んでもって帰ってくんな馬鹿ーー!!」
と、大声でミドは叫んだ。
「………じゃあね」
とリンクは穴へ走って行った。
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