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さようなら





デクの樹のもとへ着くと、トライフォースの話をリンクにしてあげていた。


触れた者の心を写す世界を作る力をもつトライフォース。

ディン、ネール、フロルは何故ハイラルへそんなものを置いていったのだろう。人間など欲深い生き物だ。そんな物、悪用されるだけでしか無いのに。



「ハイラルに恐ろしい危機が迫っている…あの悪しき者をトライフォースに触れさせてはならぬ……!!
だが、お前のその勇気があれば必ずやつの野望を打ち砕けるだろう……」


「………なんでオレなの?」




なんでリンクなんだろう。


リンクの近くに寄って頭を撫でる。リンクを見つめて瞼を薄く閉じる。

ずっと繰り返す物語。

いつ終止符が打たれるかすらわからない。戦い、封印し、また封印が解かれたら戦う。それは何世代もリンクという名が、魂が続く終わりが見えない物語。
誰が終止符を打つのだろう。出来ることなら自分のように其れを知り、リンクの傍にいてくれる誰かが止める事を願いたい。
自分ではきっと無理だから。



「お前なら出来る…外の世界を知って大きくなれ……リンク」


外の世界、それを聞いたリンクの雰囲気は変わった。
コキリの一部の子供達と一緒にリンクも外の世界に想いを馳せていた。



「………うん!!」



どうやらリンクは決意したようだ。



「ハイラル城へ行け、そこに神に選ばれし姫がおいでになるはずじゃ……姫にこの石を渡すのじゃ、

あの男がわしに呪いをかけてまで欲した"森の精霊石"を……!!」



デクの樹がそういうと数歩後ろに下がった。リンクの頭上に翡翠の光が起こり、そこから宝石の様な光と暖かい光が合わさった石が現れた。

途端に一粒の光がふよふよと漂い翡翠色の光が自分の身体の中へと入っていった。
……??なんだろ。
少し身体が軽くなった。大妖精の光みたいなものかな。



「ユキセよ……」

『…デクの樹、サマ………』



呼ばれてデクの樹に近付く。



『……ごめん。ごめんなさい。私は…本当は……』

「謝らなくても良い……ワシはお前さんの気持ちはわかってるつもりじゃよ。それよりも、リンク達を助けてくれてありがとう」

『…………』

「ふむ。……もし、非があると感じるのならどうかワシの頼みをきいてはくれないかの」

『…頼み……?』

「ワシの意思を継いで、お前さんの知識でどうかリンクの助けになっておくれ……」


『………わかりました』



物語を知りながらもゴーマの呪いの影響でデクの樹を助けられなかった。
其れを知ってるのにデクの樹は許してくれた。自分はそれを許せないのになぜそんなに優しくなれるのかが解らなかった。

けれど、デクの樹の優しさは無駄に出来ない。
元の世界へ、現世へ帰る手掛かりを探す為にもリンクを助けるしかないのだろう。



「お前さんの歌が聞けなくなるのは残念じゃのぅ………じゃが、ワシはこの森を、みなを見守っておるからの…」



つぅ…と涙が自然に流れてきた。もうすぐ別れの時がくる。



「頼むぞ…リンク、………ワシはお前を…信じておる…」


「………うん、わかった…デクの樹サマ」


「ワシの亡きがらで盾を作るがよい…
あらゆる邪悪からお前を守るだろう……。
ナビィ……ナビィや……」



《デクの樹サマ………》



ナビィが近寄る。



「ナビィ………リンク達を助けるのだ……頼んだ…ぞ。
みな……、さらば……じゃ………」


(そなたの今を、これからの未来に平穏と安寧があらんことを)



そしてデクの樹は静かに息を引き取った。コキリの皆はそれぞれを大声をあげたりして泣いた。ただ、リンクだけは肩を震わしながら声を出さずに我慢していた。



気づけば、皆を慰めるかの様に優しい風が吹いた。



互いに擦れ合いながら出す葉の音や風の音がが以前、デクの樹に歌った歌のメロディに少し似てて思い出して更に涙が出た。


それは深い森に落ちた歌。

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