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死を垣間見る





……って何を言ってるんだ自分。


自分の命の危機なのにどんな疑問点見つけてんだ。

どのみち自分死ぬじゃん。答えが解る時って自分が殺される時じゃないか。

ここで人生終わりハイサヨナラかぁ………。


やっと、やっと此処が現実(リアル)だって認識出来るようになってきたんだよ?

今まで此処にいる間は夢で、あの山に戻ったら夢から覚めたんだと思ってた。

あそこに戻れなくなってからは長い長い夢を見てるんだと思った。
けど、こんな痛い思いして、
まだ物語は始まったばかりなのに此処で死んでしまうだなんて、
そんなの嫌だ……。



ぼやけた視界の中、見えたのはリンクとミドがゴーマに何か丸いもの……石を投げつけていた。


ああもうあの馬鹿……、
囮の意味がなくなったじゃないか。まぁまだ死にたくないけどリンク達が死ぬ訳にはもっといかない。

ああ、ゴーマの目線が違う方向へいってしまった。




怖いのならその気持ちに素直に従って逃げてくれればいいのに。

けれど今、最良なその選択は出来ない。
自分としてもゴーマを倒さずに逃げるだなんてしてほしくはない、そんな、物語から逸れるとか。

精霊石を取られてしまえば逃げられたね、助かって良かったね、の問題どころでは無くなってしまうのだ。



『く…ぅぁ…』



一番良いのは自分の身体が動くことなんだろうけど……。まだ身体がズキズキと痛み、うめき声しか出せない。
どうすればいい?

どうすればリンクの力になれるの?

異世界から来たのに、何も助けられないままだなんて嫌だ。

よくある話みたいに、力が、力が欲しい……!!




突然周りが真空になったとでもいうようにゴーマの歩く音や、石の転がる音が一切しなくなった。

音だけがなくなった空間。





――道は閉ざされた。元に戻るも戻れない。




急に頭に言葉が響く。声は聞こえない。けれどそれははっきりと“話していた”。


……ちょっと待て。何で声が聞こえてくるの。
自分は実はもう一人の闇の自分がいてそれは生前の自分でという某もう一人の僕じゃあるまいな。二重人格は遠慮したい。





――選ばれた人間は力を授かり戦う。
剣に物を言わせて。

けれど役目を終えた人間は何処へ行くか……?
唯一無二の力を持ってして人々の頂点に立つだけ。





この会話は一方通行らしい。
言っている意味が解らないまま、ただ聞いていた。





――何故君は人を助けようとする想いがあるの?
果たして、その想いはいつまで続くかな?




まるで言葉遊びみたいな言葉を並べてこちらに語りかけてきた。





――人間を助けたい。
それは優しさ?それとも偽善?





それ以降声を発しないのは返答を求めているからだろう。




自分は弱い。無謀にこうやって囮になっても相手は自分達をどうやって殺すかサイコロで方法を決めるようなものだ。

会ったばかりだけれど、自分はそれでもリンク達を助けたい。

偽善と言われても目の前で死んでしまうよりはマシだ。





――ふぅん……。出会って知ったばかりの人間に簡単に命を差し出すような真似をするのか……。
まぁいい、一度だけ痛みを無くしてあげる。



は!?なにを……。



――後は頑張ってみてよ。
もしソイツを倒せたなら御褒美をあげる……。



え!?ちょっと!?



そう言ったきり、呼び掛けても頭に声は響かなかった。



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