甲殻寄生獣ゴーマ
その邪悪で禍々しい姿に自分達は勝つことが出来るのだろうか……。
「あ、あいつ……デクの樹サマを、た、食べてる……!!」
『……ッ!』
ぱらぱらと木屑が辺りに散っていく。力強い顎の力で噛み砕き、そこから黒く変色し腐敗し始めていた。
きっとデクの樹の力を食べているのかもしれない。
こんな短時間で………樹にとって中を抉られれるのは致命傷だ。
自分の顔がひどく険しくなるのがわかる。
『くそ……どうすればッ!!』
そいつは「石はどこだ」とブツブツ呟きながらデクの樹を喰らい続けていた。
やがて、こちらへ気がつき鋭い目をとてつもなくぎょろつかせながらこちらを向いてきた。
あー…あれあれ、コイツが出て来るムービー!あれと一緒で目玉をぎょろりと一回転させていた。
実際に見ると気味が悪くてキショイ!
恐怖で動けないこちらにゆっくりと向かったその体はこの人間の中で最も身長が高い自分でもとても巨大に感じた。
「で、でけぇ……!」
「こんなのがデクの樹サマを……!!」
鋭い爪を持った蠍のような複数の腕をまるで覆うかのように広げた。
「お前達にも……呪いをかけてやろうか……!!!」
背中にまで冷や汗が垂れる。
さすが現実(リアル)……迫力在りすぎだ………!!!
「わ、わ、わああああ!!!」
『い、一旦距離取るよ……!!』
このまま突っ立ったままだと生命の危機を感じ二人の腕を引っぱり、震える足を無理矢理に動かして走った。
幸い相手は動作が鈍く簡単に距離が離れた。
……しばらく柱に隠れてしばらくやり過ごそう。
「ど、どうすれば良いんだよ……!!!」
「わ、分からない……!!」
二人とも強大な敵に脅えていた。
そりゃ自分だってそうだ。あんなの現実には存在しない世界にいたから。
平穏な国の日本。驚異なんて何もない時代。
相手の弱点はあの大きな目玉。けど二人は脅えて動けなさそうだ。
自分がパチンコを使ってやりたいが、生憎パチンコなんて生憎やった事がないから命中率が心配だ。
……いっそのこと、自分が囮になれば。
隙が出来るしもしかしたら少しでも良い方向に進むかもしれない……。
傷付くかもしれない、痛い思いをするかもしれない。けどどのみちそうなるかもしれないなら……。
『……リンク、ミド、……自分が囮になる』
「ぇ……」
『その隙に逃げるなりなんなりして。言っとくけど、死なないでね』
「お、おい……!?」
《ちょッ、待ってユキセ!?》
柱の陰から出て、ゴーマを見据えた。
……正直怖い。脚が相変わらずガクガクと震えているが武者奮いだと思いたい。
恐いよ。
けどもっと嫌なんだよ、恐いんだよ、目の前で誰かが傷付くのは。
あの爪で攻撃されたら痛いだろうな、とか余計な事を考えてしまう。……えーい!!当たって砕けろ!!
『鬼さんこちら!手のなる方へ!!』
手なんて鳴らして無いけど。ゴーマを挑発して自分に攻撃を向けさせる。
ゴーマはゴキブリの如く害虫走りをしながら素早くこちらに追いつき、振るってくる爪を寸でで避ける。
爪が顔や腕にかすって傷を作るがお構い無しに攻撃がくるのでそんなのに構ってられない。
カッターナイフ手で強く握って隙を見て目玉に投げる。鋭い刃が上手く目玉に入った
……と思ったが、
あと少しのところで破片は硬い甲殻に当たり、無駄な攻撃となった。
『……ッ!!』
距離を取ろうと後ろに下がるとそこには小さなチビゴーマがいて背後から体当たりをされた。
肘を強く打ち付けて、受け身も取れずに地面に転がる。
後ろに下がる筈が前へ倒れてしまいゴーマと距離が近くなり、爪をぎりぎりで転んで避ける。
立ち上がった瞬間、反対の爪がこっちに勢いよく振り払われた。
『!!!』
ドガアァッ!!
そして自分は吹っ飛ばされ、壁に当たった。
『かはっ……』
壁に当たったと同時にミシミシと嫌な音がなる。衝撃に骨が耐えられ無かったらしい。
壁から崩れ落ちた。顔が痛いが地面がひんやりしていた。
やっぱり……ただの一般人がやるべきことでは無かったらしい。分かってた……でしゃばってることくらい。
当たって砕けろを見事に体現して見せてしまった身体は痛くて動かない。
リンク達が叫んでいるが、朦朧としかけた意識では何を言っているのか聞き取れなかった。
無謀だと言えたこの行為。
ゴーマは少しずつこちらに近づいてった……獲物を狩るために。
あ、ゴーマって肉食なのかな。
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