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妖精ナビィ





この先の展開は知ってる。
リンクが魔物を倒して、デクの樹は死んでしまう。
これが、未来……。みらい……。



『…………リンク、呼ぶの?』



思いの外小さい声でデクの樹に問うた。
震えが止まらない。



「…そうじゃ。
ナビィ………ナビィや」

《デクの樹サマ……》



茂みから淡い青の光を放つ妖精、ナビィが飛んでくる。
心配そうな声色でデクの樹に応えた。



「ナビィ……、
見ての通り、邪悪なるものがわしの中に入った。…あの妖精の無い子を、あの子を此処へいざなうのだ……ユキセも共においき、
わしは大丈夫だから」

『……(何も聞かないのか……)』

《……はい、行きましょユキセ》

『…うん…よろしく、ナビィ』


デクの樹が心配でちらちらと後ろを振り向きつつ、
ナビィを引き連れてまだ震える身体を無理やり押さえ込みながらリンクの家へ急いだ。

動くには気分が悪く、動く度に頭がくらくらした。
胸の奥が痛む感じもする。
気付かれない程度に速度を緩め走る。
リンクの家が見えるとなにやら小さい影が……あれは…。



『………あれ?ミド何やってんのこんな夜中に……?』

「げ、起きてたのかよ!」



何故かミドがのこぎりで床を削ってた。
リンクか自分を落とすつもりなのだろうが……そんな見え透いたワナ、普通引っ掛かるだろうか。というより中を確認してからそれを実行すれば良かったんじゃないだろうか……。



ナビィは眼中にないのかミドを無視してさっさとリンクを起こしにいった。
なんかミド哀れ……。



暫くしてナビィが外へ出てきた。
リンクが起きたようだ………というか、ナビィが逃げてる…?様に見えた。
どうやらリンクは寝ぼけてるみたい。



「さっそくミドに自慢しにいくぞ!」



と意気込みながら梯子に向かっていくけれど、そのままミドが空けた穴にはまり、ミドを下敷きにして落ちていった。
……良かったねミド、罠に引っかかって。



「あれ?ミド、なんでこんなとこに?」

「大きなお世話だよ。てオイそこ!
笑ってんじゃねぇ!!」

「あ!姉ちゃん!
見て!オレにもついに妖精が来たよ!」


ミドがあまりなもので、思わずよそ見して笑いを堪えてるとリンクが嬉しそうにこちらに向かって言った。
微えましくてさっき感じてた恐怖も震えも少しだけ薄れたけれど。



『……今はそんな場合じゃないんだよ』


「え?」


「ってオイ!見ろよ!」



ミドが草を指差す。
その草は目に見えるほど急激にに枯れていってしまった。



「草が枯れてる……?」

「こんな事…初めてだぞ……!」

《早くデクの樹サマのもとへ行って!お願い!!》



ナビィの言う通りにリンクはデクの樹へ行った。

自分も毛布を置いて、こっちへ来るときに持ってきたカッターナイフを手に持ち向かう。



「オイ!!」



向かう途中、ミドが引き止める。
顔だけそちらに向けた。




『……なにかな』




自分的に早くリンクの元に行きたいんだけれど、ミドの訝しげな瞳が聞くまで駄目だと告げていた。
ため息をつききちんと相手へ向き直した。




「お前、何か知ってるのかよ」



こんな遅くに起きてたのを怪しんだんだろう、と少しして理解した。それかよそ者だから一番に怪しんだか……。
けれど何した、とは聞かないんだ…。

知ってることは知ってる。けれど



『……知ったら、元に戻れないよ…?』

「……え」



少しだけ冷めた目でミドを見つめる。ここにいる間、一度も見せなかった表情だ。



『』



子供達を頼んだ、と言って
ミドを見ずに去った。


丸い黄色の月と小さな過去の光がただ、何もいわずにうっすらと森を照らしていた。



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