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それぞれの思い






「辛い気持ちは良くわかる。だが食料もなしにあの平原を渡ろうなど、ただの命知らずの馬鹿者がやることだ!!

その剣と盾が泣くぞ!!」


「…すみません………」



と強く叱るインパにおばさんがそんなに怒らなくとも……となだめる。
ガノンドロフに追い付こうというのは良く分かる。だが本当に危なかった。これはリンクの慢心がいけなかった。


「ガノンドロフを許せない……、あいつを倒したい。でもこのオレが本当にあいつに勝てるだろうか……?

でも、これ以上親しい者達が傷付いていくのは……。

それに姉ちゃん……ユキセだって無事かも分からない……分からないことだらけなんだ」


『……』



自分の名前が出てからコップへと伸ばした手が止まりかけたが、再度コップへと動かした。

不安なんだろう。妖精がお供にいるが、自分…ユキセも一緒だったから。
今思えば自分のことを話さない人間によく懐いたものだ……。



「先ずは体力と鋭気を取り戻せ。話はそれからだ」



リンクの気持ちを聞き、フ……と大人の笑みを見せる。
次にこちらを見た。多少疑うように目を細めるが……まあおおよそ検討はついてる。



「……リンクは会った事があるから解るが…そこの青年は?」


『……申し遅れましたが名はソウマ、と申します。旅をしているところ一度彼らに出会いまして……一度別れたのですが、縁があって彼が倒れてるところに』

「私に出くわした訳か」



最もらしい理由をこじつけて作り笑いでインパに紹介した。
それでさえもインパを騙せるとは思わない思えない。



「旅といったな。こんなご時世のなかで旅をすることに危険だと思わなかったのか?」

『……こんな時代だからこそ、です。

世界が危機に瀕しているのに伝説の勇者が魔王を打ち倒すまで、ただ世界が平和になるのを待つだけなのはサボりと一緒だと思うんです。
出来ることは少なくても自分が今なにが出来るのか、どれだけ救えるのか、探し、そして行なうために旅をしているんです』



我ながら矛盾した話をしてると思う。
物語のあらすじを知っている、ならリンクに教えれば良いのに。
ただでさえ知らない展開続きだ、これ以上自分が知らない物語にならないように教える気などないのだ。
救える命もあったかもしれない。
でもそれさえも無視してただリンクが、時の勇者が物語の軸通りに進むのをただ見ているのだ。



「その歳にしては大人びた、勇気ある思いだな」

『……ただカッコ付けたがりなだけですよ。
心内では不安ばかりですから』



こんな会話をしてるなか、リンクはガツガツと数多の数の皿を綺麗にしていった。
満腹中枢が可笑しくなってるんじゃないか?
良い加減そこで止めとけ、吐くぞ。


そして数時間後、吐きはしなかったが腹痛に苛まれインパに溜め息つかれた時の勇者がおりましたとさ。

シリアスを返せ。




* * * * *




「一週間は村の外に出るな」

「い、一週間も……!?」



早くガノンドロフを倒すため賢者の封印を解きたいリンクは長すぎる期間だろう。
今のところ闇の気配はしないしガノンドロフもまだ時の勇者を倒そうとしても当分時間は掛かるだろうとのことだった。
体力と気力を養うためにインパが徹底的に鍛えてくれるらしい。
既に特別プログラムも組んでるとか。めちゃんこやる気出てるなインパ。

恐らく兵士並みに鍛えるつもりだろう。
頑張れリンク。



「……ソウマ、まさかお前見捨てるとかないよな」

『頑張れよ、時の勇者殿』

「……インパ!ソウマも世界の為に一緒に鍛えるってさー!」

『おい!?何勝手なことを言って……!?』

「そうか、先日の咄嗟の動きといいソウマの腕も見てみたいところだった」



リンク、マジデ殺ス…………。
何故か自分までカカリコ村に滞在することになってしまった。
しょうがない、ここでフックショットが手に入った筈だし無理やり追いかけっこゲームに参加させよう。



ご飯をくれたおばさんは宿屋を経営してるしどうせこんなご時世じゃ客なんて取れないからと無料で部屋を貸してくれた。
なんて気前の良い人なんだ……あとでリンクも引きずって手伝いに行こう。



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