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仔竜と別れ





魚も二人分ちゃんと捕らせて、籠は焚火の薪に使った。ゴミはちゃんと処分しないと。

ガサッ、と音がしてモンスターかと思い、反射で剣を手にしたが先ほどの竜の子だった。



《まだいるよ》




ただこちらをじっと見ている仔竜。鳴く、ということは一切無かった。
声が出せないのだろうか。それとも人間が怖いだけなのか。

リンクは焼けた魚を手にして
仔竜へ近づいた。
微笑ましいそれを見て
笑みが零れたが、直ぐに緩んだ頬が引きつるのを感じた。

リンクが差し出した魚のカケラじゃなく手に持っていた大きい方を持ってかれて微笑ましい友情は脆くも崩れ去った。



……意外と食い意地張ってる竜だ。



そんなリンク達の後ろ、木の陰にぼう、と蒼白く光るモノが二つ……。
爪が見えた途端、リンクに向けて叫んだ。


『リンク!』

「!!」



しかし、自分が行く前に
なんと仔竜がモンスターに攻撃した。
その口から放たれた強力な炎に焼かれたモンスターは消し炭になって消えていった。
……小さいのに凄い炎を出すなぁ。
凄いやこの子。



「モンスターが……。

お前……俺のこと、助けてくれたんだ」



仔竜は自分達から離れた所で
縮こまっていた。
まるで怒られて縮こまってるみたいだ。
その瞳はなんだか寂しげで。


『今まで着いてきてたのは………』

「ひょっとして……独りぼっちで寂しかったのか?」


2人で仔竜を見やる。
リンクがゆっくりと近づいて
頭を撫でると気持ち良さそうに目を細める。




「り……んく」



『リンク何か言った?』

「え?いや?」

『ナビィ?』

《何も言ってないわよ?》

「りん……りんく」



二人できょろきょろするが
どう聞いても声の主はこの仔竜。



「『…………しゃべった!?』」


何回もリンクの名前を呼ぶ仔竜。
…………本当に頭良いんだ。



《凄い!たまに言葉を覚える竜がいるのよ。
でも聞いたの初めて!》



たまに……て事は稀だと考えてたよりも
結構な確率で覚えるのか?楽しげに言葉を覚えさせるリンクと仔竜を見ながら考えた。
……仕込めば道中の稼ぎになるかな。



「ね……ね……ねぇちゃ!」

『あ、リンクのが感染ってる。ユキセだよ。ユキセ』

「…………ねぇちゃ!」



…………まぁいいや。それで。うん。

頭を撫でると大人しくしてて可愛らしい。先ほどまでの態度は見せずごろごろと喉を鳴らしていた。まるで猫みたいだ。



「よーしお前とずっと友達だーっ!」



と頭に乗せたり、抱き着いたりたまに仔竜が
エキサイティングして炎出してまたリンクの髪が燃えたりしてたけどさっきの
険悪ムードは何処へ行ったのか、すっかり仲良しさんになった。



「あ、名前ないや」


「なま……え?」


《そうね……ドレイコとかは?》


『それだとドラゴンをドラゴンって言ってるようなものだし、なんかなぁ……』


《いいじゃない、ドレイコ》


『そうだなぁ……。

……ヴァルバジアとか。いやあれは……』


「ヴ…ヴァル!ヴァル!」


『…………え?』




ついボスの名前を出してしまったのが悪かったのか何故かヴァルという名前になってしまった。
まずった……と思った時には遅く、本人が気に入ってしまったため仕方無くヴァルと呼んでいた。

とてもそれは駄目だとは言えない雰囲気で苦笑するしかなかった。




しばらくヴァルと一緒にハイラル平原を進んでいたけれど、別れは意外と早く来てしまった。

ひと月もしないある日、突然仔竜はいなくなってしまった。探しはしたが、
親を見つけたのかもしれないと落ち込んで泣いてしまったリンクを慰めた。



『しょうがないよ。そもそも竜と人は住む世界が違かったんだし……』

「でも……」

『んー……、じゃあさ』



今度は二度と人間に捕まらないように、また出会えるようにとリンクと一緒に願って。

その願いも皮肉に願ってしまったけれど。




* * * * *





『………ヴァル、か』


「ソウマなんか言ったか?」

『いや、別に。何でもない』



小さくあの時の名前を呟く。
名前は唸りを上げる地鳴りにかき消された。


感傷に浸っている暇はない。
これ以上、もう彼が暴れるのは見たくないのだ。
わずかだけれど無邪気に幼かった頃のリンクと遊ぶ光景が脳裏を掠める。


けれどもし、私が考えずに口走ったせいでヴァルがヴァルバジアとなってしまったのなら……。
もし、私を恨んでいるのなら……。



けれど、今は待って欲しい。

全てが終わるまで。







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