七年前のとある出来事
自分の記憶に残っているのは
まだ小さな頃の姿だった。
出会ったのは7年前のこと。
「ねぇあれ……」
リンクが自分を呼び、振り向いたらリンクは何かにずっと目を止まらせていた。
籠に入れられた赤い仔竜。物珍しさに思わず脚が止まる。
『ん……?あぁ、竜か……。
ん?え?ドラゴン?』
そこは鑑賞用と思われる小動物達を売っている露店。小さな籠に閉じこめられて陳列されていた。
可愛らしい小鳥や子猫に……。
か、蛙?蛇?……あれ、なんかモンスターで見覚えのあるけれどなんなのか名状し難いスライムのもいる。観賞用にしては餌はどうするのだろうかわからない
……とにかく様々な生き物に混じって
小さな仔竜がぽつんといた。
その丈とは狭そうな籠に押し込められていたのだ。とぐろを巻いて憂いた目をしていた。
産まれた時から独りで生きていく、というのでないかぎり恐らく親とはぐれた時か卵の時(卵生かは知らないが)に捕まったのだろう。
「ねぇ」
『無理』
「えっ!まだ何も言ってな……」
『リンク君。今、余裕分のお金は遊んだお陰で尽き掛けております』
「えー!だって姉ちゃんがゼルダが奢ってくれるって言ったのに断ったんじゃん!それにさっきたくさん貰ったし!」
『シャラーップ。マナーだよマナー。
女の子にお金出させるなどだめっ。
そして節約!セ・ツ・ヤ・ク!』
《おお、たまには良いこと言うのネ!》
黙っててそこの妖精。
納得いかないリンクは頬を風船みたいに膨らませて眉を寄せてこちらを見つめる。
か、可愛いとかそんなこと思ってないんだからね!
「……ねぇー」
『だ・め。此処に最初来たとき1人で勝手に無銭飲食して大変な目にあったの誰だったっけ?』
「う゛っ……それは……」
『まったく……』
しかし、竜などまさかこんなところでお目に掛かるなんて思いもしなかったのでしばらく観察してみる。
本当は実物の竜なんてはじめてだから少し興奮してる。
この世界の竜なんてみんな敵意むき出しで襲いかかってくるからね。性格としては西洋のドラゴンと一緒なのだろう。
しかし色といい……姿といい……、
どこかで見たような竜だった。
もしかしたら似た様な竜がこの世界に沢山いるのかもしれない。
しかもこの竜の子供に付いている値段はたったの70ルピー……。
リンクの前では断ったとはいえ、
……安すぎやしないか?いや物語初期ではお財布は99までしか入らないからどちらかと言えば高いか……。
今の自分達にはちょっと高いけれど……。竜って希少なんじゃ……。
この世界じゃ、なンでも屋の爆弾10個分と同じ価値なのか。
面倒の見方も分からないし、捕まったのは運が悪かったと思って見なかったことにしようか……。
………確か竜って頭が良いんじゃなかったっけ。これでもしこの竜が成長して復讐されでもしたら……世界救う前に終わるよね。
餌的な意味で。
などと不必要な考えが一瞬頭の中をよぎった。
別の要因で世界が終わっても帰れないから困る。
要らない死亡フラグは立てたくはない。
無駄遣いは出来ない……今日は野宿確定か。
さらばベッド。
『……はぁ。
まぁ70なら……キツいけどいっか……』
毎度ありー、と70ルピーを引き替えに荷物に竜が増えた。
リンクが大喜びして飛び回る。
……代わりに今日はリンクに魚を釣って貰うか。
自給自足の苦労を味わうがいい、フフフ。
って、……自分も道連れか。
* * * * *
『ほら、もう自由だよ』
籠の扉を開けて仔竜を出させる。
嫌なのか地味に気に入っていたのか籠から出てこない。
「えー、逃がすの?」
『餌なんて何を食べさせればいいか解らないもん。逃がすっきゃない』
その言葉に納得して渋々頷いたが、じゃあ俺が!と買って出てきた。
しかし一向に籠から出ない竜の子に痺れを切らして手を出す………
が、
――ガブッ
「いででで!いてーっ!!」
左手をまるごと噛み付かれ、
挙げ句の果てに壮大な炎を吹かれていた。
『ご愁傷様』
「もういい!」
と腹を立てたリンクはさっさと行ってしまった。
『……やれやれ』
《子供ね……》
まぁ、実際子供だけど。
竜の子はこちらをずっと見てくるがリンクを置いてく訳にはいかないので自分も去る。
しかし、ナビィが後ろを見ながら
《あれ?あの子着いてくるよ》
そう言ったので、自分も後ろを見たら本当に岩陰に隠れていた。その後も自分達の後をついてきていたが、リンクはまだ怒っていた。
《いつまで続くかな》
『さぁ……リンクもリンクだからねぇ……。
あ、リンクー魚ちゃんと釣ってねー』
《現実はシビアね……》
『そんなもんさ。
まぁご飯食べる頃にはもう怒りなんて忘れちゃってるよ』
まぁ本当に忘れていたのは驚いた……というか呆れたけど。
………まあ子どもだし。
それで良いのか、リンク。
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