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デクの樹サマ





今、自分がいるとしたら病院だろうか。
それとも家………?

意識が戻ってお腹に暖かい温もりを感じた。
だれ?



『んー……』

「あ、姉ちゃん目醒めた!」



目を開けるとまだ数えるくらいしか見たことの無い素朴な緑の服、さらさらとリンクの動きで揺れる金の髪。
ぼうっとした頭の中の思考をフル回転させ、状況を把握。
リンクがいる、ということは此処はあっちの世界?よく分からない。でもリンクがいるから此処は異世界なのだろう。



『…リンクは何でここに…』

「ここで姉ちゃん見つけたんだけど中々起きなくて」



気付いたらリンクも寝てたらしい。相当寝てたのか……ということは寝顔を見られていたのか、恥ずかしい。
たしか目が覚める前は頭痛がして、それでもの凄い痛みが襲って倒れるって感じたのは覚えてる。
けれど意識が戻って気付いたら此処にいた。その時自分は家へ通じた道路にいたはずなんだ。
あの切り株の場所には居なかった………。
何でだろう?場所は関係ないのかな。

しかし、原因は不明のまま。
切り株が話すことが出来たら良いのだけど。この森を統括する大樹のように。


『あれ、頭痛くないし…』

「大丈夫かの?」

『ああ大丈夫…、…………大丈夫?』



何処から声が?辺りを見回してもリンク以外に人は見あたらない。
聞こえた声は辺りに静かに響くような音だ。
「こっちじゃよこっち」と後ろに今寄り掛かってる壁から聞こえ……いや振動が…。




『!!!!』




上を向くと巨大な木々と凸凹した顔のような……。鷲鼻が見え、風が流れてくるからしてちゃんとした鼻らしい。

そんな光景を目にして自分は大きく目を開いて固まってしまった。



「姉ちゃん?」

『……』

「ビックリさせてしまったようじゃの……」




* * * *




「落ち着いたかの?」

『あ、はい……多分』

「ワシはデクの樹という、お前さんは?」

『………ユキセです』



自分はこの大樹、デクの樹サマに寄り掛かっていたようだ。
リンクせめて場所とか言って欲しかったな!聞かなかった自分が悪いけど。仕方がない。まさか寄りかかっていたのがまさか年老いた人語を話せる大樹だなんて誰が予想出来たんだ。


「リンク、ちょいっと席外してはくれないかの」

「…?……わかった」



リンクがこの場から離れ、多少静かになった。
リンクを外させたということはそれほど重要なことを話すつもりらしい。



「さてと、まず今の状況を説明しようかの。お前さんはいきなりこの老木の背中側に"落ちて"来たのじゃ」



落ちた……どのくらいの高さからは分からないけどよく平気だったな自分。普通それで起きないとはそれだけ図太いということ……という訳では無いんだろう。



「ワシの所に訪れたリンクはビックリしての。お前さんが此処で寝ていたのがそんなに驚きなんじゃろう。なかなか起きぬお前さんにしまいには泣き出してもうて……」



リンク…目もとが赤く腫れてたのはそれだったらしい。
何故2、3度しか会ってないのに泣いたのかは分からないけど。



「リンクの話によると………スタルキッドにならず、外の遠い所から来たと」



まあ、外からってのは嘘だけど。
心の中でぽろりと溢す。それがいけなかったのかなんなのか……目の前の樹に驚きの発言をされた。



「まあ嘘じゃろな」

『え゙…』


内心ドキッとし、デクの樹サマを下から見上げる形で見る。



「歳を取ると冴えるでの。

そして、お前さんの中からあの切り株と同じ“光”が見える」

『光……?』


「小さな光じゃが……
詳しくこちらへ来た理由を教えてはくれぬかの?」


意を決して、少しずつゆっくり話した。

異世界から来たこと、

切り株からこちらへ来たこと、
頭痛がしていきなりこちらへ来た事も。

その時だけ口の筋肉が硬直したように動かなくて、けど無理矢理動かして伝えた。
今までこんなに必死に話したのは初めてかもしれない。



「ふむ、いきなりとな…」



考える様に不自然に幹が揺れる。驚いて鳥たちが飛んでいったりしてるんだけど。
この大樹は気付いてない。気付け。



「何せ、今までそんな例はこの森では無かったからのぉ……」


静かにそう答えた。
やっぱり解らないか……。がっくりと肩を落とす。
もとより打開策はないと括っていたけれど……。



「そう落胆せずとも。大丈夫じゃよ、お前さんをスタルキッドにはさせんわい」



…………されても困るがな。



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あきゅろす。
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