初恋は桜の中で
告白1


 ――桜架は、星を見るのが好きだった。

 流れ星に願っても、大切なあの人たちが戻って来ないと理解はしていても、それでもせめて夜空に輝く星々に見守られていると感じていたかったから。






 部長だった三年生の卒業が近づいて来ると、当時二年生だった先輩達も『受験勉強に集中したいから』と言って段々と部活に来なくなった。
 一年生部員は一人だけだったので、次の年の部長には自然と桜架が決められていた。
 何人かの二年生は席を残していたいたけれど、元々幽霊部員だった人達なので単純に天文部の事など、もう忘れてしまっているだけなのかも知れない。

 新学期になってからの入部希望者は今までに一人。
 それも桜架の身内の少女 ――桜子だった。

 桜架と桜子は本当の兄妹ではない。

 桜架の両親は彼が小学三年生の時に亡くなっていた。
 世界で一人ぼっちになってしまった幼い桜架を引き取ってくれたのは父親の妹だった。

 『私が桜架を守ってあげるから…!』と、大切な存在を亡くして、自分の存在さえも消してしまいそうだった幼い桜架をこの世界に繋ぎとめてくれた。
 春の陽だまりの様に優しい女性。

 桜子はその女性の娘――つまり、桜架と桜子の関係は従兄妹同士。
 
 どちらの名前にも桜の字が使われているのは、桜架と桜子の父親が親友同士で。
 子供が産まれたら何か繋がりのある名前にしよう、と、昔から約束をしていたからだ。





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