初恋は桜の中で
君の笑顔を知らない4


「――と、言うか。何故いる」

 現在、夏陽はサッカー部に所属している。
 強豪ではないが、弱小と言われるほど弱くはなく。成績もそこそこ。
 数多く存在する部活の中でも、特に人気が高い部活。

 その人気の大半の理由は女子にモテる!≠ニ言うキャッチコピーに寄るものだったのだけれど、今年入った新入部員は飛び抜けて多かった。

 夏陽は運動が得意で、サッカー部に入った。のだけれど、一年生は全員補欠が基本だ。
 だから今頃は、女子から黄色い声援を送られながら試合の練習をしている先輩方≠フ、遥か後方で基礎体力作りをしている筈だったのだ。

「今日は、ミーティングだけで終わったの!」

 それで、天文学に様子を見に来たら、片想い中の相手が友達と良い雰囲気を作っていたのだ、邪魔したくもなると夏陽は思う。
 ――正直、エロティックなその絵に何度か生唾を飲み込んでいたのだが、それは健全な男子高校生の心の中の秘密に留めておいて。

「まぁ。葉月の状況なんて、どうでもいい事だな」

「椿ちゃん。オレに対して冷たくない…? 」

 そんな事より、と、椿は夏陽に遠ざけられた一夜の隣に移動する。
 実際問題、小学生時代から椿を追いかけている夏陽よりも、中学から意気投合した一夜の方が椿とは仲が良かった。

 表情の変化に乏しい一夜の考えを、椿は口に出す前に理解する。
 そんな椿の姿を見る度に、夏陽の心はざわめくのだ。

「……、…ま…って……。……」

 今だって椿は、夏陽の目の前で、一夜に何やら耳打ちをして。楽しそうにしている。

 (――オレには、あんな笑顔みせないのに)


「…、…雪白くん……」

 それに、一夜も一夜だ。

 好きな相手が出来た。と、言っていたから、安心していたのに――

 安心。

 そう、夏陽は、一夜と椿の関係に嫉妬していたのだ。


 もう、ずっと以前から。


 誰にも、知られずに。




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あきゅろす。
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