銀色の空に 2 □ 「・・・・今日は、これで帰る事にするよ。風邪を引かない様にね」 この人を恨めない理由が一つだけある。 『俺に、優しくするのはやめてくださいよ…』 「!・・・陸は、娘みたいなものだからね」 『……誰に頼まれたんすか』 だらだらと流れる血を眺めながら、海翔さんにそう言うと、海翔さんは苦笑気味に口を開く。 「……病院、行かないと出血多量で死ぬからね」 それだけ言って、自分だけ傘を差して車に戻って行った。 借金、そんなのあいつにとってはただの肩書きでしか無いんだ。 きっとまだ裏がある。 海翔さんは人を、娘と思っている人間の恋人を殺せる程悪い人間では無いんだ。 「陸っ」 『ごめ・・ちょっと、貧血……』 借金なんて、とっくに返し終わってる。 あいつは、娘が居ない。 死んだんだ、慎の様に殺されて・・ 「大丈夫か…?」 『いや、まだ腕にナイフ刺さってるから』 「・・・病院行くぞ」 だから、たまたま見つけた俺を娘の様に可愛がってくれたよな。 けど、時にその愛情が、殺意に変わったりする。 俺がガードと話してるだけで、あんたそいつ等半殺しにして… 「走るぞ」 『姫抱きかよ……』 だから、俺怖くて逃げたんだっけ 「可愛い」 『お前の可愛いの基準って何だよ』 「……陸」 『それは基準か・・?』 慎に手を回したのは、海翔さんの裏にいる人間だ。 馬鹿野郎が、俺を騙そうなんて一千万年早いんだよ。 「痛むか?」 『そりゃ痛いさ』 「歩いたほうが良いか?」 『気にすんな』 つか、俺、あん時海翔さん刺したらどうなってたの…? 「いっそ刺してくれれば、一生私の元に置いておけたんだがね…」 ゾクッ 『寒っ・・』 「大丈夫か・・・?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |