銀色の空に
潜む影
だいす?
サイコロだってば
act.5 潜む影
『そう、それで桐矢馬鹿だから洗剤とか混ぜてさ〜』
他愛ない話で盛り上がって、暗くない空を見てまだ話せると喜んでた。
「洗剤って…」
でも、俺は一つ忘れていた。
『父さんがそれ飲んで高熱出したらしくてね』
幸せの後に、必ず影が潜みよることを。
「んな危ねぇもん良く作れたな」
『俺笑っちゃったよ』
PRRRR─…
途端、携帯の初期設定のままの着信音が鳴る。
『あっごめん、…はい』
<久しぶりだね、陸くん>
『・・・・』
──やっちまおうぜ
──良いのか?
───終わりだよ?
『海翔さん、ですね』
<良く分かったね>
『忘れませんよ、悪いですけど、あの件なら……』
忘れない、この声、特徴。
俺が福岡へ逃げた原因。
<八神蒼夜、仲が良いみたいだね>
『だったら?』
俺は、俺も驚くくらい冷静だった。
<まだ、鏡慎の借金は残ってるんだよ?後十万じゃないか>
『全部終わったでしょ?これ以上鏡の件で何か言うなら私も、貴方を殺りかねない。』
慎が頭をしてた族の一人が、タチの悪いヤクザに金を借りて、慎がその保証人になった。
そいつは今、どこにいるかさえ分からなくない。
慎は居ない、その責任感で俺が働いて
二百万、そんな大金は手に入らなくて、一ヶ月間だけ契約をした。
性的なものは一切無しの、メイドのようなもの。
返した筈の金が、何故かまたどんどん増して、一時一人で福岡に逃げた。
けど、やっぱり見つかるんだよね。
<やっと見つけたのに、酷いねぇ、君は。>
『とにかく、私の親兄弟親戚友人、手を出したら私は貴方を許しませんから。それでは』
プツッ
しつこくて苛々する。
携帯とかほんと面倒だよ。
「大丈夫か?」
『ん?あぁ、大丈夫。昔のバイト先の社長』
「そうか」
バレバレだよね、嘘ついてるの。
『もー、一緒風呂入るか』
「は!?」
目を見張って俺を見る蒼夜は、やっぱり分かりやすい。
『冗談だよ』
PRRRR─…
『…っ…はい、何?』
<次は八神蒼夜を殺るよ>
次は…?
『おま、え、が?』
<月に十万ずつなんて、足りないんだよ。それに何かと恨み妬みを買う男だったからなぁ>
蒼夜の前だから、とバレないように唇をキリキリと食い縛って拳を握る。
信じられない
こんな奴に
『そんな事で・・・?』
<ふんっ、次はどうなるかね〜?>
『ふざっけんッ』
プツッ、ツーツー
怒鳴る瞬間に一方的に電話を切られ、苛つきが募る。
『っくそ、またモルモットかよ…ッ』
「陸?」
心配そうに見つめる蒼夜には、とても言える事じゃない。
『大丈夫だよ』
そう言ってふわりと笑うと、蒼夜も笑う。
あっ可愛い
それでつい抱き着いてしまった。
『落ち着く性格ですね〜』
「りっ陸」
慌てる様子がまた可愛い。
「頼れよ」
『・・・へへ、ありがと』
ほら、また受け止めてくれるだろ?
だから甘えちゃうんだよ。
「柔らかいな」
『なっ、何が』
「胸とか、体とか」
何を確かめてんだよ、と言いつつも離れない俺。
これは、重症かもしれない。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!