銀色の空に 5 □ 「綺麗だな」 『何も無いしね〜』 蒼夜を部屋に招いて、支度をする。 制服や下着を一日分詰め込んだバッグを部屋の隅に置いて、白や黒や赤、時折ピンクや黄色の部屋を改めて見ていた。 「あれ好きなのか?」 あれ、とはきっとガラス細工の事だろう。 涙型の大小繋がっている青い飾りや、ただ丸い透明な、少しピンクや黄色が水玉で描かれている飾り。 ガラステーブルの下の物置には、ハートや猫や犬、クローバーや龍などが飾られている。 『一時期ハマってて、今は暇が無くて買いに行けないんだよね〜。』 「…女らしいとこもあるんだな」 『喧嘩売ってんの?』 小さなガラス細工を眺めていたら、一つだけ不釣り合いな指輪。 「つけないのか?」 『……付けるよ、墓参り行く日だけ』 そう言って察したのか、ちょっと困った顔をした蒼夜が面白かった。 『最近気付いてさー、ほら、内側に"I love it forever"ってかいてんの。』 ──永久に愛す。 「・・・・そうか」 『まるでプロポーズ。ま、いつか絶対…意地でも幸せになるけどね』 「・・・俺が、幸せにしてやる」 こいつ何かと上手いな。 ドキドキしちまったぜ。 『今でも、充分幸せなんだけどね。』 「俺に任せろ」 『じゃあ俺も蒼夜の事幸せにしてやるよ。』 馬鹿みたいなこの会話が、俺にとっての幸せなんだよ。 誰のお陰とかそんなんじゃなくて、この場に居ることが幸せ。 時には辛いけど、その後に必ず幸福はあるって、俺は信じてるから。 『じゃ、行ってきます』 「お邪魔しました」 「いってらっしゃい」 「また来なさい」 ほら、これが俺の幸せ。 俺が居て、皆が居る。 『行こっ』 「あぁ」 些細な幸せが此処にある。 気付いてないだけでね。 To be continued.. [*前へ] [戻る] |