銀色の空に
2
□
PRRRR─…
『ん・・』
携帯の着信音が耳に入ってきて、微かな唸り声を上げて携帯を取る。
PRRRR─…
『・・・・もしもし』
<陸!学校は?!家にも帰らずにどこ行ってんだ!?>
『春?…昨日の、えと学校は行くから』
電話の相手は春樹で、未だに寝てる蒼夜に悪い程でかい声で話し出した。
<友達か何か知らねぇけど、早く帰ってこい!!襲われたりしたらどうすんだよっ?!>
その言葉に、物凄い苛つきを感じた自分が居たのは直ぐに分かった。
広い部屋を出て、階段を降りてリビングに行く。
『蒼夜だよ』
<蒼夜?…八神蒼夜、か?少し慎さんに似てるからって、慎さんの変わりはいないんだぞ!?良いから早くっ>
『っ……、慎の変わりなんていらねぇよ!!あいつの変わりなんていない?そんなの俺が一番実感してんだよ!!』
<陸っ>
『慎、慎慎って、皆してあいつの事ばっかで、蒼夜だって良い奴だ、俺だっていつまでも引きずってられねぇし……慎は、慎はもういねーんだよ!!!』
<陸・・ッ>
プツッ・・─
『はぁ・・ッ、少しは忘れさせてよ…、』
時刻を見れば九時を回ってて、春樹が怒った理由も分かるけど、自分の友達を否定されて凄く歯痒くて。
また寝室に戻ればスヤスヤと眠る蒼夜の姿があった。
「・・兄貴か?」
『っ、起きてたのかよ』
いきなりばちっと目を開けて、蒼夜が俺の目を見て問うて来た。
『蒼夜ん家にいるって言ったら…凄い否定されてさ、何か凄いむかついて・・、ちょっと喧嘩してきた』
「・・・仕方ねぇだろ。こんな身なりで、良い噂なんて一つもねぇから。」
何だか悔しそうな顔で蒼夜は言った。
そんな顔してほしくないのに。
『俺がむかついたのは、・・皆が何でもかんでも慎を重ねる事。…蒼夜には蒼夜なりの良いとこあるのに』
すっげぇ悔しい
そう呟いて、蒼夜に背を向けて頭を抱えた。
『確かに、良い奴だった。良い奴だったけど、居ない奴追っ掛けてどうする?』
『そいつの変わりとか、居ないのにさ、別に探してもないし・・』
『…俺は俺しか居ないし、蒼夜だって蒼夜しかいないよ。』
だって、そうだろ?
そんな風に振り返る時には、苦しいくらいに抱き締められてて
蒼夜の前だけでは弱音吐けて、その度に不器用な返事をしてくれる。
『苦し、い…って』
「黙ってろ」
『・・・・っ』
泣いたり笑ったり、忙しい奴。
多分蒼夜ならそんな風に思ってると思う。
何か、俺いつかこいつに堕ちそうだな・・・
「落ち着いたか?」
『ん〜?もちょっと』
「そうか・・やけに素直だな」
『俺はいつでも素直だよ』
ただ、素直に抱き止めてくれる蒼夜に甘えたかった。
受け止めて欲しかった。
だから俺も、素直に受け止めてもらう。
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