[携帯モード] [URL送信]

銀色の空に
4






また暇になった、とさっき通った道を歩いていると、長身の男が俯いたまま歩いていた。

何だか面白い。




それにしてもでかい奴。
頭は綺麗な赤茶色。

蒼夜みた、い・・な……




『よし、逃げよ』



クルッと百八十度回転し、曲がり角を曲がる。


否、曲がろうとした。





「何してんだ?陸」



虎に捕らえられたシマウマ状態。

いや、シャレとかじゃなくて




『あ、ら・・奇遇ね。』



「・・・どうした」




不自然に首だけ振り返り、その場を後にしようとすれば直ぐに捕まる。


女なんてバレたら…


先程の冦吏の言葉が脳裏を駆け巡る。



大人しく普通に帰れば良かった…。




『えと、それより蒼夜こそどうした、の?』




にっこり不自然に腕を組むが、蒼夜はあまり気にしていない様子。





「鍵、家の鍵落とした」



ぶはっ



『蒼夜って意外におっちょこちょい?あっははッ!!家の鍵落とすってっ』





ゲラゲラ指差し、腹を抱えて笑えば心底不機嫌な表情になる蒼夜。


あれ?鍵?




『あ、鍵ってもしかして・・』



これ?とさっき拾ったキラキラした鍵を差し出す。





「・・・・陸が拾ったのか」



ぎこちなくお礼を言われ、何故か腕を引っ張られ何処かへ向かっている蒼夜。





『えっ、何?!俺急いでんだけど!』




焦ってんだけど、の間違いだけどね。





「礼するから家まで来い」



来いって強制だよね、これ普通に拉致だよね。





『でもっ、その・・』





かなり困った顔で蒼夜を見たが、何故かその足は止まる所かスピードを上げた。


「……(可愛ッ)」




『蒼夜〜?』











抵抗しつつ好奇心で着いてきた蒼夜の家。


高級マンション、しかも部屋の中二階建てになってるやつ。





『でっか』



「行くぞ」




入り口の前でパスワードを入力し、カードキーを差し込んだ後、扉が開いた。


直ぐにエレベーターが着きそれに乗る。


密室で沈黙が続いた。
一体何処まで行くんだよ。





『蒼夜ん家、お金持ち?』


「・・親が弁護士、と医者。金持ちかは分かねぇけど」




はいはい成程、生まれつきのお坊ちゃんなのね。



─チーン


エレベーターが到着したみたいで、あの独特な音が鳴った。

着いた先、最上階。


ボンボンなのね、うん、君はボンボンなんだね。





「此処」



着くなりまたカードキーをスライドして、そして鍵を差し込んだ。

何かと厳重だ。





「入れ」



『お邪魔しまーす…』




入るなり広い玄関、長い廊下。

左右に数個の扉。



手を引かれ、ずかずかと最奥の扉へと連れていかれる。





「適当に座ってろ」




かなり広いリビングに、でっかい液晶テレビ、ガラスのテーブルに白いふかふかなソファー。



ぽすん、と大人しくソファーに座り込み、ガラステーブルを眺めた。

カーテンの隙間からちらりと見える景色は絶景だった。





「茶しかねぇけど」



『へ?あ、ありがと』




テーブルに置かれたお茶を手に取り、音を立てないようにすする。


ことん、とまたテーブルに戻し、蒼夜に視線を移す。




「一つ聞いて良いか?」




途端に蒼夜が口を開く。




『ん?』



「・・・・幻覚か?」




指差された先、胸だ。

部屋に見とれて隠すのをすっかり忘れていた。


あぁ、やらかした…





『!?あ、えと…、女になりたくて豊胸手術を・・』



「ほぉ」




ぐんぐん近付いてくる蒼夜の体。




『じゃなくて、生まれつきの病気でっ』


「そうか」




更に近付いてくる蒼夜、そして俺の真横にぴったりと座り、顔を近付けてきた。




「女なのか?」


──ドキッ




『その、それ、は』



「陸」



ヤバい、顔が近すぎてそろそろ…




『蒼夜、あの、これは』



ぽすっ

とうとう体が持たなくなり、ソファーに倒れた陸の体。

その上に跨がる蒼夜。





『だから、やだって言ったのに・・っ』




「男子校に女がいて良いのか?」





もぞもぞと体を横向きにして顔を合わせない様にする。




「何か理由があるんだろ?」





騙していた事に怒っていると言う訳でもなく、その声は優しいものだった。





『怒ってない…?』




「怒る?」



『騙してたのに・・』





体を縮めて申し訳無さそうな顔で、顔だけ蒼夜に向ける。




「怒るより、驚いた」




『・・・・怒ってないの?』



「怒らねぇって」





その一言に安堵のため息をつき、ソファーに足を伸ばしてまた正面を向く。





『良かった・・ッ!俺嫌われたらどうしようかと思った…』



「…いや、嫌いになる訳無いだろ(寧ろ都合が良くなった)」




『絶対、絶対秘密ね?』




「当たり前だ」





俺は、その言葉に心底安心した。

[*前へ][次へ#]

4/5ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!