銀色の空に
2
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『朝から物騒な家だ』
ブラブラと適当に散歩していると、何かの鍵を拾った。
『・・・何の鍵?』
鍵にしては豪華で、しっかりしていて、太陽に反射してキラキラ光ってる。
まぁ良いかとまたブラブラして、そうしたら学校の近くまで来ていた。
ニャーオ─・・
弱々しい猫の鳴き声。
どこからか響いてくる。
『にゃー、どこー?』
ニャー・・─
細くて狭い、人が一人通れるか通れないか、スレスレの道にそれは居た。
『うっわ、大丈夫か?』
首や足辺りから血を流していて、今にも死にそうな白い猫。
白が、赤に染まってる。
考えた末に病院へ連れて行く事にした。
『大丈夫そうですか?』
「一命は取り止めましたが、酷い虐待を受けていたみたいです。少し入院した方が良さそうですね・・・。」
動物虐待、最近はそんな言葉がニュースやラジオで放送されている。
こんな近くにも、そんな卑劣な事をする奴がいたなんて…
『じゃあ、お願いします。えっと・・おいくらですか?』
「四万三千円になりますが、お持ちですか?」
心配そうに視線を合わせてくれる先生は、何だか誰かに似ている。
『・・・・あ、二万しか無いや』
「ゆっくり返して頂ければいいので」
ね、とにっこり笑う先生には悪いが、そんな面倒な事出来やしねぇ。
『いや、ちょっと待って下さい』
そう言って携帯を取り出せば、そのタイミングにまた店の自動扉が開いた。
「太一さん、さっきまた猫、が………月城?」
若い声に呼ばれ振り向けば、そこには見覚えのある顔。
『・・黒崎?』
「…お前どうしたんだよ」
そこには黒崎が居て、周りには確か同じクラスの奴等が二人程立っていた。
『あぁ…、猫が怪我してて。ってか、お前ん家動物病院だったの?』
「俺じゃなくてこいつ」
こいつ、と指差されたのはさっきの二人組の一人。
悪いが名前なんて全く知らない。
『あぁ、そう』
「……山下だ」
『だから山下動物病院ねぇ…、そっちは?』
山下の隣にいる奴を指差すと、若干驚きながらこっちを見てきた。
「濱崎・・つか、お前全然性格違ぇじゃん」
『そこは触れんな』
「いや触れなきゃいけねーとこだろ」
『濱崎君のえっち』
「まてまてまて、何がだよ」
こいつとは上手くやって行けそうだ、などと考えていると、黒崎の視線を感じた。
『何、惚れた?』
「瑠樹みたいな事言うなよ。つか……や、何でもない・・・」
『それって余計気になるんだよ馬鹿』
「馬鹿は余計だろ」
そんな会話を済ませ、獣医の先生を見ながら軽く笑う。
『あぁ、俺山下の友達で、超仲良しなんですよ!』
「いや、今初めて話したよな?」
「だから出会った時から皆友人なんだって」
「嘘つけ。会った瞬間から風間を酷い目に合わせた奴が、説得力無ぇよ」
『あれは理由があったのよ、俺真剣にあいつ殺そうと思った』
思い出し笑い、と言うのかどうなのかは置いておくが、ちょっと笑みが溢れた。
不意に獣医の先生が目を合わせて来て、嬉しそうに笑ってくる。
「綺麗な子だなぁ、隆之」
「やめろよ気持ち悪ぃ…」
「隆之をよろしくね」
『はい、しっかり花嫁修行させて来ますね』
「いや明らかにお前が乗られる方だろーが」
やっぱり俺って受け顔なの…?
けど、山下の家庭に問題は無いみたいだ。
そしてボソッと、山下父に言われた事。
「胸、隠した方が良いよ」
『…………あ゙』
やっべー、今日サラシしてねぇや。
ありがとよ、山下父
『あ、お金でしたね』
「いや、隆之の友達なら話しは別だよ。まぁ、虐待だし国が出してくれるさ」
その適当さ良いのか?
『けど…』
「とりあえず、飼い主を探してくれれば問題ないよ」
他の人には内緒だよ、と
にっこり微笑んでくれた。
『えと、ありがとうございます。ありがと、隆之』
「たかっ…」
ありがとう、ともう一度笑い、とりあえず一週間後に来る事にした。
『それじゃ、一週間後にまた来ますね』
「はい、痴漢に気を付けてね」
『っははッ、はーい』
そして黒崎と濱崎に、じゃあなーと言ってその場を後にした。
「綺麗な子だねぇ」
「うっせ(胸…?)」
「……(あったよな)」
「俺・・(欲求不満…?)」
それぞれ違う考えをするのだった。
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