小説(短編&ドール小説) T:言霊―始まりのレクイエム―<リディヤ・アーレ> 役目のない長い時間はただ積まれた本を読むの。 言葉には神秘な力が宿ると言われているってある本で読んだの。 ワタシの力はそれに近いものだと知った瞬間だった。 でもワタシの持つ力は神秘なんかじゃなくて、『魔力』。 奴らは『魔法の力』と醜く笑うけど、こんなの違う。 お伽話の中の夢のようなものなんかじゃ…。 魔を宿した力でしかない。 命を奪うだけの力。 けれど、力を自覚しても何も変わりはしないもの。 この声で囀るのは死を運ぶためだけで。 奴らがどんなに「美しい声、魔法の声だ」と褒めても少しも嬉しくなんかなかった。 [次へ#] [戻る] |