小説(中編) ―2― それを失った時、 「この世に信じるものなど最初からなかったのだ。神などと言うものも、哀れな子羊を救えなければ、無意味だよ。そうだろう?」 そう言って生気もなく笑ったオリフラム。 一瞬で何もかもを諦めたように、悲しげに、そして絶望に満たされて。 花の柩に横たわる女性、テレシア。 誰もが心から敬愛し、みんなに愛された女性。 花さえも霞むほどの美貌に、慈悲深い誰よりも美しい心。 それが握り潰された現実。 オリフラムは安らかに眠るその頬を優しく撫でるばかり。 その傍らに立つ二人の子供たち。 テレシアの写し身のようなイシュタルは悲しく綺麗な涙を流し、弟のシーヴァスは無表情に佇んでいた。 幸せは儚くも無残に壊れてしまったのだ。 [*前へ][次へ#] |