小説(中編) ―3― この世に縛り付けて、苦痛の海に漂わせて…。 「この世のすべての魂を狩り終えるのが先か、君への溢れる愛に溺れ死ぬのが先か。どっちだろう、ね?」 俺にはどちらでもいい。 君さえこの腕の中にいてくれるのなら、どんな結末でもいい。 いつか迎える終焉の時、 君はきっと人形のまま虚ろにその世界を閉じるのだろうね。 何も感じないままに。 すでに壊れかけの心。 遠い昔に壊れた俺の心。 君に恋い焦がれ狂った俺を少しでも憐れに思ってくれるのなら、どうか…、 「…どうか…俺を独りにしないで…」 震える声は祈りに似て、凍った涙は君のために流れる。 大切な人を苦しめてまで突き通すエゴ。 消滅するべきは自分。 どうしても君を離せない俺こそ愚かな生き物。 菫色の瞳。 俺を責めることもしない。 純真なその心を砕いたも同じだというのに。 君自身は確かに黒く染まっていくのに、その心は穢れを知らない真っ白なままで、君の眩しさは何一つ変わってはいない。 [*前へ] |