小説(中編) 安らぎの死の先に‥‥ ―――殺して、私を殺して、罪にまみれた私を―― ねえ、君は幾度その言葉を繰り返したの? 昏い瞳で、壊れたように何度も何度も。 誰かの魂を糧に生き永らえる宿命。 魂の供給はその華奢な身体に偽りの永遠を約束した。 重ねる罪。 もう日だまりの記憶さえも、思い出せないほどに永い年月。 許されない存在に、闇は確実に忍び寄り、彼女を喰らおうと待っている。 ひたひたと忍び寄る闇。 ひび割れていく彼女の心、音を立てる彼女の魂。 少しづつ、空を映したようなとても綺麗な髪は黒く染まり、柔らかで温かなその肌は青白く、生の象徴でもある体温さえも彼女から奪っていった。 己で命を絶つ事も。 すべて、彼女の細い手から零れ落ちた。 だから俺に懇願する。 『殺して』 と。 枯れる事のない涙に濡れて、微笑む姿は儚い。 人を犠牲にしてまで生きたくないと、優しい君はそう思って当然だろうね…。 [次へ#] |