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詩集
切望―更なる歪み―


 振りかぶる銀。
 飛び散る赤。
 幾度も繰り返される、希望と失望。
 枯れる事のない涙に、濡れ続ける心。
 途切れない祈り。
 叶わない願い。
 それでも僕は求める、唯一のヒトを。
 総てをありのままに包み込んでくれる愛を。
 これはその為の儀式なのだと、思うのだ。
 記憶の中で積み上げられる遺体と、流れる血さえも幸せになる為なのだと。
 見慣れた景色もそう思えば一瞬にして意味のあるものに変わった。
 絶望の中にささやかでも灯がともり、僕は微かに満たされるようだった。

「僕が幸せになるための贄なんだ」

 誰に聴かせるのではなく零れた言葉に、転がる遺体はただの肉の塊から尊い存在になったように思えた。
 贄をもっと積めば僕は必ず幸せになれるんだ…。
 そうに決まっている!

 僕の輝く金色の髪にこびりついた血さえ、甘露となり神に捧げられる。
 神なんて偶像だと信じられなかった僕だけど、願いを聞き届けられるのならば信じ贄を幾らでも捧げよう。
 ただ僕の信じる神は、迷える子羊を救えはしない愚神ではなく、血を吐くほどの願いに見合った魔に身を浸せば愚神なんかより聞き届けてくれるだろう魔神に。
 ただ一つの願い。
 けれど決して叶わない願いの為なら、僕は何でも出来る。

「だって人間なんてものはいらないじゃないか…」

 贄は幾らでもいる。
 愚者に満たされた世界を浄化する行為にも似て、とても美しいじゃないか。
 ああ、僕の為に贄と血を捧げ、願いに近付くと同時に世界は浄化されてゆく。
 何て素敵な事なのだろうか。
 こんなにも純粋な願い。
ただ一つだけの願い。
 それさえ嗤うのか。
 醜い世界を創造した血塗られた神よ。
 僕は神さえ引きずり落としてまでも願いを叶えてみせる!
 絶望した人間を救いはしない怠惰な神などいらない。

「ああ、次の生け贄は誰にしようか。ねぇ?」

 貴方の最期に映る僕はきっと何よりも美しいんだ。
 僕の総てをを愛してはくれない貴方が悪いのだから、仕方ない結末だよね?
 だからせめて尊い贄となって僕のために命を捧げてよ。

 一人…二人…三人…四人…五人…六人…、

 あと幾つの贄が必要なのかな…。

 絶望の行為だったものが今では幸せへの第一歩のようで、返り血さえ僕は何か嬉しいよ。

 ふふふっ。



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あきゅろす。
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