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戦国BASARA
生きる意味は君がくれた 姫若子×鶴姫 過去設定


※二人の過去すべて捏造です。
 そういったものがお嫌いな方はお戻りください。
 





「なんで僕はこんなに駄目なんだろう。」

海のそばの高台にちっちゃく座りこみ、僕はそっと流れ落ちる涙をぬぐった。

海では家臣たちが船から積み荷を降ろしている。

本当だったらここで下ろすはずではなかった積み荷。

不甲斐なさに、また涙が伝う。

いつまでそうしていたのか分からなかったが、不意に誰かに肩を叩かれた。

「なんで泣いてるんですか?」

びくっとして振り返ると、5歳くらいの少女が立っていた。

少女は巫女のような服を着ておかっぱ頭を傾けて僕の顔を覗き込んだ。

僕はぐっと涙を拭う。

「泣いてなんかないよ。」

明らかに年下の少女にそんな事を言われたのが恥ずかしくって、強がって見せる。

「ウソ。
泣いてます。」

少女はじっと僕を見つめる。

僕はその少女の無垢な瞳が気まずくて、ぱっと視線を外す。

「お姉ちゃん?」

悪気なんてあるはずもないだろうが、少女の一言に涙があふれ出す。

少女はあわてて僕に駆け寄る。

「ごめんなさい。
鶴、あなたのことを傷つけてしまった?」

そっと僕の袖をつかみ心配そうに顔を覗き込む少女に向かって首を横に必死に振った。

何かをしゃべろうと口を開くが、嗚咽が邪魔をして言葉が出ない。

「痛いの痛いの、とんで行けー。」

少女はそう言って僕の手をさする。

本当に心配そうな少女の瞳に僕はぐっと嗚咽を飲み込み、少女の手を握り返す。

少女の手は想像以上に小さくて、温かくっていつの間にか僕の涙は止まっていた。


「ありがとう。
でも僕が泣いてるのは痛いせいでも君のせいでもないよ。
自分が嫌になったんだ。
みんなに迷惑かけてばっかりで、全然役に立てないから。」

僕は真っ白で折れてしまいそうなくらい細い自分の腕を見てさみしく笑った。

「ほんとに女の子みたいだ。」

長曽我部家の次期当主として生まれたのに、みんなの期待とは裏腹に僕は体が弱くてよく熱を出して寝込んでいる。

戦に出るなんて程遠くて、外に出て稽古をするのもままならない。

みんなの期待はいつの間にか、落胆に変わっていた。

いっそのこと姫様だったら、みんな期待なんかしなかったのにな

いつか家臣の一人がぽろっと漏らした言葉。

その時僕はわざと聞いてないふりをした。

僕のせいで男が不敬罪で処罰されるのが嫌だったってのもあるけど、本当は認めたくなかったから。

みんながそう思っているのは薄々気づいていたけど自分で弱さを認めるのがなんだか怖くって気づかないふりをした。

でもあの時に認めてしまえばよかった。

そうすれば僕が傷つくだけでだれにも迷惑なんてかかんなかったのに。

僕はみんなに認めてほしい一心で父に無理を言って瀬戸内の凱旋に連れて行ってもらうことにした。

無事に土佐に帰国してみんなを見返したかっただけなのに。

でも実際普段床に臥せってばかりの僕が船になんか乗り込んだら、気分が悪くなり、ろくに食事はできないし、ろくに眠ることもできなかった。

そのせいで船の進路は大幅に遅れ、ついに予定にはない伊代国にしばし滞在することになった。

みんないろいろと予定も詰まっていたのに僕のせいですべて台無しだ。

「僕が生きている意味なんて存在しない。
僕なんていなくなちゃえばいいのに。」

無意識にそうつぶやくと少女がギュッと僕にしがみついた。

「いなくなっていい人なんていません。」

「うるさい。
簡単に言うな。
そんなの所詮綺麗事だよ。
僕のことをよくも知らないくせにそんな事を言うなんて君は無責任だね。」

僕は普段言えない不満を何の関係もない少女に感情に任せてぶちまけた。

少女は申し訳なそうな顔をしてからぱっと身をひるがえし僕の元から走り去って行った。

慰めてくれている幼い少女に向かっても僕はこんなひどいことを言うのだ。

本当に消えてしまえれば楽なのに。



*****

それから数日で食糧の調達は済んだ。

今日の午後には出港の予定だ。

「何でもこのそばの神社の人が親切にも食料を分けてくださったらしいです。」

僕の世話係の女が朝餉の用意をしながら言う。

僕はいい子の仮面をかぶり相槌を打つ。

本当はこんなところでとどまったりする予定じゃなかったのにって?

すべてが嫌味に聞こえるのは僕の心が汚れているから?

「でもね、その神社、俗世は穢れているだとかで娘さんを社に閉じ込めているらしいんですって。
そんなの子供によくないし、可哀そうだと思うんですよね。」

子供と言えばあれからあの少女には会っていないが、彼女はどこの子なんだろう。

ひどい行いを謝りたい。

そうしているうちに朝餉を食べ終え、調子がよかったので外に出ることにした。

そして船から離れた海岸から海を眺めていると、そっと誰かが隣に座った。

あの少女だった。

しかしあのときとは違って少女の手足には痛々しい傷跡がある。

まるで誰かに殴られたような痣。

僕は何も言えず、彼女も何も言わなかった。

ただ二人で座っていた。

それから僕を呼ぶ家臣の声が遠くから聞こえた。

もう出港の時間なのだろう。

僕が立ち上がり、少女を見ると彼女は泣いていた。

そして少女は僕を見ることなく、海だけを眺めながら独り言のように呟く。

「鶴はね、かごの鳥なの。
自由に外にも出れない可哀そうな鳥。
それでもやっぱり外に出たくって。
でも外に出るたび羽根を折られる。
それでも外に出たかった。
でもね鶴、もう限界みたい。」

そう言いきると彼女は膝を抱え、肩を震わせた。

「もう鶴には羽根がないから。」

彼女が、鶴が女中の話していた社の少女だったのか。

こっそりと抜け出してはひどい仕打ちを受けているのか。

僕はそっと彼女の肩を抱くが、言葉が出てこない。

少女がふいに僕の肩を思いきり押した。

突然のことに僕はバランスを崩して、後ろに倒れた。

少女は目にいっぱい涙をためながらも、強い眼を僕に向けた。

「まだ羽があるのにどうして自分で限界を作るのですか?
他の人に何を言われてもそんなことであきらめないで下さい。
あなたには鶴と違って大きな羽があるんだから。」

最後はほぼ泣きじゃくっていて聞き取れなかったが、僕は再び少女を抱きしめた。

「あんなにひどいことを言った僕を慰めてくれるなんて君はなんて優しい子なんだろうね。」

少女は僕の腕の中で延々と泣き続けた。

そして泣き疲れたのかまぶたを閉じた。

彼女を守りたい。

彼女に笑っていてほしい。

少女を抱きとめているうちに自分の中にあふれ出す感じたこともない感情。

「僕が強くなって、君を救いに来るよ。」

同情の優しさではなく、心の底からそう思った。

会ったばかりの君にそんな感情を抱くなんて不思議だが、何だかそんなことも気にならないくらい君を守るのが生まれた時から決まっていたような気さえしてしまう。

君を守るために僕は生まれた。 

君は僕に生きる意味をくれたんだ。

それだけで僕はなんだか前より強くなった気がした。

「いつか迎えに来るから待っててくれるかい、僕の運命のお姫さま。」

そうして少女の額にそっと唇を落とすと、僕は彼女に別れを告げ、船に戻る。

その足取りは来た時とは比べ物にならないくらいしっかりとしており、顔つきはもう姫若子なんて呼ばせないくらい凛々しい男のものだった。

そして数年後一人は家臣から兄貴と絶対なる信頼を寄せられる男となって、もう一人は先見の目で人々を救おうとする心優しい女となった。

そんな二人が再会するのはそんな遠いことではないだろう。


fin









あとがき
意味わかんなくなって強制終了。
かわいい姫若子が描きたかっただけなのにひねくれたネガティブ人間になってしまった。

















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あきゅろす。
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