甘い禁断にkiss
思わぬところに
それにしても。
俺を狙う連中とは、誰なんだろう。
ひとりは、家庭科室によく来るあのアホガキ……
それくらいしか思い当たらない。
篠宮が本気なのかどうかはわからないけど、アイツは感情が素直に表に出るから、多分本気なんじゃないかと思う。
受けとめられないには変わらないけど……
天井を見つめてボーッと考えていると、ガチャとドアが開く音がした。
「あ、佐久間先生じゃん、何してんのー」
「なんだ、各務先生か」
「“なんだ”って何、何なのそれは」
保健室のドアから顔を覗かせていたのは、体育教師の各務慎太郎先生だった。
フレンドリーでいじりやすいから、教師仲間や子供からも人気のある先生だ。
今もにこにこと笑っている。
「いやー、伊吹の野郎が『各務、汗臭い』を連呼してくるから職員室から逃げてきたんだよー」
「相変わらずですね、でも実際各務先生は汗臭いですよ」
「え、ソレ佐久間先生まで言っちゃうの!? ひでぇ!」
二人の笑い声と和やかな空気が保健室に広がる。
さっきまでのジメジメとした雰囲気はどこへやら。
皆に好かれるのも分かる気がする。
「……んで、ちょっと佐久間先生に相談したいことあんだけど、いい?」
何だろう、各務先生が相談だなんて。悩みなんてなさそうな顔してるのに。
少し好奇心の力も借りて、俺が首を縦に振ると、各務先生は先程伊吹先生が座っていた丸椅子に腰掛けた。
「あの、真剣な話なんだけどさ」
「はい」
「俺、生徒に告られちゃって……どうしたらいいのかわかんないんだよな」
各務先生は頭を掻いて気まずそうに笑う。
一瞬部屋の中が静まり返った。
「そ……それは大変だ」
俺は苦笑いしか出来なかった。
思わぬところに同じ境遇の人がいたんだ。
でも、さすがに男子生徒に告白された訳ではなくとも、同じ立場の人がいると少し心が落ち着くし。
せっかくだからゆっくり話を聞いてやろうと思った。
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