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第再話



「コーヒーでいい?」
「はい」

返事を得てから、コーヒーを2人分淹れた。
閑静なリビングに香ばしい香りが広がる。
それを一口飲んでからそうっと口を開いた。


「――えっと、とりあえず1日ぶり?」
「そうですね」

梓の声色は思ったほど柔らかくはなかった。
というか、感情とかそういうものが全くないみたいだ。
からっぽ。
呆然、という言葉が似合った。


「なんで、コッチに?」
「……色々ありまして。翼とかもコッチに来ていますよ」

どこかに行っちゃったみたいですけど、と言ってふっと視線を窓へ投げた。
しかし夜中なので映るのは自分の顔だけ。
翼とかも、というのは他に何人くらいのことなのだろう。


「――ま、とりあえずさ」
「?」
「せっかくコッチに来たんだからせいぜい楽しんでいきなよ」
「は……?」
「あはっ、いいね梓のその顔!」

あの自信家の梓が呆気にとられた、という顔をするのはなかなか面白い。


「いや、砂月……」
「大丈夫大丈夫、うちは両親帰ってこないし部屋も余ってたはずだから」
「そういう問題じゃあ……」
「問題ない問題ない! でもご飯とかが大変そうね、まあなんとかなるかな」
「だから、あの、」
「梓」
「は、はい?」

「じゃあなんでコッチ来たのよ」

「え――」
「なんでそんなに拒否するの、なんで甘えてくれないの、
私はみんなに甘えていたよねそうでしょ、
どうして梓達がコッチに来たかはぶっちゃけどうでもいいよいつか教えてくれれば
でもそれまでは、お世話させてよ」

いきなりまくし立てたからか、お互いに沈黙になった。
何も言えないでいる。
キーンと耳鳴りのようなものが鼓膜に刺さった気がした。
時計が夜中の3時を指したところで、ガチャンと玄関のドアが開く音を聞いた。


「――翼くんかなあ」
「いや、多分これは違う……と思います」
そういうのが気配で分かるものなのか、と少なからず疑問には思ったが、見た方が早いと思いリビングの扉が向こうから開かれるのをじっと待つ。


「――――おお、」
「また、会いましたね……会長」

梓の読み通り、入ってきたのは翼くんではなく一樹会長だった。


「ていうか、会長ともあろうお人がコッチに来ているのは問題があるのでは?」
「ん、大丈夫だ」

そう事もなげに言いながら、私達の座るリビングのソファーへ自身も座った。


「大丈夫って……」
「心配すんなって。まあ、状況としては心配してもしなくても同じだけどな」
「?」

「俺達の世界、時間が狂っちまった」



To be continued...


(くるくるくるり)
(回り続ける部屋の時計を)
(床にたたきつけたくなった)


*

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