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君に、囁こう(梓)


 たかが一日。
 されど一日、だ。


「梓ぁぁあああ!」

「う、わ先輩…?」

今はお昼休み。
次が移動教室なのもあって、ちょっと早いけれど、廊下に出れば図ったかのようなタイミングで砂月先輩が―――突進してきた。
怖。顔怖っ。

―――僕、何かしたっけ。


「はぁ…はぁっ…お前!」

「な、何です?」

「いやもう本当、半年以上前に知り合っておいてそりゃねーだろ、とは自分でも思ったけども!」

「は?だから何ですか…」

相変わらず要領を得ない。
この先輩はいつもそうだ。遠回しな言い方や自分の思ったことだけを口に出してくる。
大体、本当に僕が何したって――


「梓…お前、誕生日だったのかああ!」



* * * * *


今日は朝珍しく早起きできて。
珍しく忘れ物ゼロで。
珍しく羊と哉多との抗争に混じることもなく。

珍しいこと尽くしでルンルンだったはずの今日こと12月20日。


「そういえば、今日は梓くんの誕生日なんだよね」

「え、」


その月子ちゃんの一言で、ほくほくと口に運んでいた錫也特製のお昼ご飯をぽろりと落とした。


「あれ、もしかして忘れた?」

「い、いいや…」

「そうだよねっ!
砂月ちゃん、よく部活で梓くんと仲良くしてるし」

「(仲良く?あのウザいぱっつんと?)いや…そうではなく…」

「ん?」


「誕生日、知らなかった」


* * * * *


「馬鹿ぱっつんーっ!
そりゃあ君のことはウザい後輩だな位にしか考えてなかったけどさ!」

「(僕って一体…)いやていうかぱっつんって言わないで下さいよ」

「ぱっつんだろうがハゲだろうがどうでもいいわー!」

どうでもいいわけありますか!
ぱっつんとハゲの間には髪が“ある”か“ない”かというとんでもなく大きな差が―――ってそれこそどうでもいい!


「だから誕生日くらい何ですか。別に先輩には関係ないでしょう」

「大アリじゃあああ!」

てか先輩激しっ。
いやいつもと言えばいつもなのかもしれませんけど。
なんかこう…3秒ごとに表情が変わってるような。


「もーじゃあどうしたいんですか?」

「知らない」

「知ってください」

「…。知れなかった」

「今3秒しか考えてないでしょう、勝手に過去形使わないで下さいよ」

どこまでも面倒な砂月先輩。
でも、そんな感情に起伏があって、なんか、毎日全力です!って感じのこの人が、好き。

おしとやかで、場を和ませる月子先輩とは正反対、それでいて、実は器用貧乏で何でもこなして、助けてもらったりするには十分…十二分な人。


その砂月先輩がここまでなのは、正直びっくり。


「誕生日、なんてたかが一日…」

「されど一日なの!」

「はあ…」

うーん、でもいい加減疲れてきた。

「あーうーあー…どうしよう。
パーティー、はもう今更だし…プレゼント?…何を?」

「……!」

1人でブツブツと呟く先輩の一言に、ピンと閃いた。
我ながら、いい考えを思いついた、と思う。


「せーんぱい!」

「…梓の欲しいもの…世界、とか?うわ、言いそう…」

「冗談は先輩の顔だけにしてくださいね」

「ぱっつんはいつか私がハゲにするううう!」

「僕、欲しいものがあるんですけど」

「スルーか!」

だって、対応面倒だし。

「新しい弓が「却下」」

「なんでですか」

「いや値が張りすぎですよね後輩」

文句の多い先輩だ、まったく。

「今すごく理不尽なこと考えたでしょう」

「いーえ?」

「…で、なんか私があげれそうなものないの?(先輩にもらうものなんて、自分で買えます、とか言われそうだな)」


そう、問われて、一瞬、迷った。
この僕が?この僕が。
だって、これだけは、どうしようもないことなんだから。


「先輩」

「はい?」

「だから、砂月先輩」

「だから、なに?」

まだこてん、と首を傾げる可愛い先輩。
この状況で分からないかな、と内心呆れつつ、でも鈍感な一面も見られて嬉しさも覚えつつ。


君に、囁こう


(だから先輩が欲しいっていったんですよ?)
(は…はあぁああ!?)
(もう、そんなに喜ばないでくださいよっ)
(いっぺん死のうか)

(それは勘弁…なので、今日一日を僕に下さい)



fin.


・・・・・・・・・・・・

スランプ、です
書けませんすみません…
梓ってこんなんだっけ?

ああああorz

とりあえず、HappyBirthday梓!
愛してんよ!


 




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あきゅろす。
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