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百面相(梓)


「せーんぱい!」

…幻聴。

「あれ、先輩ー?」

幻聴幻聴!

「次無視したらキスしますよ」

「わぁ梓くん何のようかなこんなところまで遠路はるばると!」

「…ちょっと傷付きました」

「ざまあみなさい――ごめんなさいすみません近いです近い近いいい!」


今回こそはキスされる、と思い目を固く閉じた瞬間、鼻先でふはっと気の抜けるような笑いが聞こえた。
それに反応して目を開ければ、目先でクスクスと笑う梓後輩。
…全体何なのさ。


「先輩は相変わらず面白いですねー」

「もちろん誉め言葉よね」

「さぁどうでしょう」


もう本当に何なんだろうか、このチビ瀬くんは。
私に恨みでもあるのか?

休み時間という休み時間いちいち私のクラスへ来て、(自分の容姿ちゃんと見てんのか目立つだろこのやろー可愛すぎて嫉妬すら覚えるわ)チャイムが鳴れば何事もなかったかのごとく去っていく。
私の脳(スペック)じゃキャリアオーバーだよ、君の行動理由を考えるには。


「百面相って楽しいですか?」

「…楽しいわよ」

いや別に楽しかないけど。
全然全くこれっぽっちも楽しくはないけども。
生意気な後輩に反抗する気持ちで言ってやった。――私は後輩相手に何をやってるんだろうか。


「…」

「…」

「…」

「何してるの梓くん」

「百面相ですが?」

「はっ?」

「先輩が楽しそうにやっていたのでやってみました」

「…」


いやいやいやいやちょっと待とうよ、ねぇ。
まず、百面相っていうのは自然現象的なものであって、そんなかくれんぼするみたいなニュアンスで言われても困る。

そして何より君の顔じゃあ百面相が殺人兵器だよ。
可愛い!きゃわいすぎる!

堪えきれなくなってクスクスと笑えば「…何ですか」と不機嫌な声が返ってきて。


「いや、百面相を意識的にやる人なんてそうそういないし?」

「先輩のことを色々考えたら自然とできましたよ」

「失礼も程々にしなさいチビ瀬くん」

「先輩の方が小さいじゃないですか、それに僕は陽日先生より大きいです」

「うわ、そうなんだ。直師ドンマイ」

「…担任を呼び捨てですか」

そう言った梓くんの声は、心なしかちょっと不機嫌に聞こえた。
…まぁきっと気のせいだろう。

「別にいいんだよ直師だし」

「…ふーん」

おろろろ?
なんか不機嫌に磨きがかかったかな?うん、怖いな。

――途端。
梓くんの表情が今さっきまでとはうってかわり、なんだか悪戯を思いついた子供みたいになった。


「…じゃあ先輩は色々と忙しいんで」

「まだお昼休みは20分も残ってるんですけどね?」

「う…、」

「先輩、さっき僕が先輩のこと考えて百面相したって言ったじゃないですか」

そんなこともあったかなぁ。
自分に都合の悪いことはすぐ忘れる、これ私の特技、えへん。


「あれ、別に先輩をけなしてなんかいなかったんですよ?」

「嘘つきは泥棒の始まりって君は知っているのかな?」

「あれは僕がそれくらい先輩を想っているってことですよ」

「無視かこんちくしょう。―――はい?」


え、ちょ、今何を言いましたかチビ瀬くん。
“想っている”?
“を持っている”の聞き間違いかな?


「――何を持っているんだろうか」

「強いて言うならば恋心とでも言いましょうか」

「…エスパー?読心術?
梓くんって電波系キャラだっけ?」

「口に出てましたから」


そう言ってあはははっと笑われた。

「――っていうか嘘だよね!?」

「何がですか?先輩の脳ですか?」

「それは私の脳が嘘みたいに馬鹿って言いたいのかしら」

「否定はしません」

「ぐあ―――じゃなくって!
恋心の方だよ!」


あぁ、――といきなり真剣な顔になったもんだから、ついドキリとした自分がいた。
…早くおさまれ、どきどき!

すると、スッと梓くんの顔が近づいてきたものだから、反射的に目を瞑れば意外にもその頭は私の顔を通りすぎた。


「――本気ですけど?」

安心したのも束の間、耳元でそう言われた。

「僕はかなり前から先輩を見てましたよ?」

「し、知るわけないでしょう」

「鈍感もここまでくると罪ですね。
大体、好きでもない人のところへわざわざいつもいつも来るわけがないでしょ?」

「…まぁ、確か、に」

「ね。
それで?返事は?」

「う…え、えっと」


どうしよう。確かに梓くんのことは嫌いじゃないけど、恋愛対象にしていいやら。
私が次の言葉に詰まっていれば、違う声が聞こえた。

「きーのせ、くん?」

「誉部長!」

「げ、」

「何を、してたのかな?」

「いやー…あっ次移動教室だった!
じゃあ先輩また今度!」

「え、あ、ちょっと――」

「まったく…大丈夫?何かされてない?」

「いや、特には」


その後、誉先輩は部活の連絡をして帰っていった。

私が、このドキドキの正体き気付くのは、また今度みたいだ。


どきどき恋の始まる音

告白されてから好きになったって、いいと思うんだ。


fin.


・・・・・・・・・・・

わー
初スタスカ夢!(パチパチ
記念すべき1話目はSummerの梓でした。
可愛いですよね、彼。
じゅんじゅんをますます好きになりましたよふふふ。←

ひたすら短編を書いていこうと思っているのでよろしくお願いしますね


 



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あきゅろす。
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