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失礼二人組

「ねぇ、私は民家に連れてってって言ったと思うんだけど」

「民家ですよー、ちょっと立派な」

「いやいやいや、これは“ちょっと”とかいうレヴェルではないよね」


目の前にでかでかと立ちはだかる、城。きっと、多分、間違いなく、あのヴァリアー邸なのだろう。

「咲サン、馬鹿っぽすぎるんで口をぽかんと開けるのやめましょー?」

「うっさいな毒舌カエル」


あぁ、マンガでフラン見たとき一瞬でもきゅんっとした私の心を返せ。
毒舌が、直接言われるとこんなにもムカつくものだとは微塵も思わなかった。ベルに同情。


「―――あ、てかさ。もしかしなくても他のメンバーズもいたりするのかな」

「メンバー?―――あーまぁ、オカマセンパイと作戦隊長以外はいますけどー」

「ひゃっほい、本物だぜ!」

「ちょっと待って下さいよー、」

勝手な真似はしないで下さい、と釘をさされた。
ふん、いいもんね。絶対このカエルの目を盗んで会いにいってやるんだから!

そう意気込む私に水を差すように。

「あ、勘違いしないで下さいよー咲サン」

「へ、何を?」

「ミーが咲サンを殺さないのは異世界から来たから情けをかけたとか、そんな生温いものじゃないんでー」

そこんとこよろしくー、なんて軽く言われた。
―――よろしくされても…。


「…じゃあなんで殺さないの」

「それは――」

「カエル、誰ソイツ?」


あぁぁ、今!今すごいシリアスに重要なこと聞くとこだったのに!

視界に入ってきたのは、邪魔なくらいな眩しい―――――金色。


「――あ…ベル、フェゴール?」

「は?なんで名前知ってんの。スパイ?」

わーフランとおんなじ反応。

「ししっなら王子が殺してやるよ」


え、ちょちょちょ!ナイフ煌めかせないで!
あぁでも本物のベルのナイフ触りたい――――じゃなくて!

「わわわわ私スパイじゃないんですって!」

「は?じゃ、何だし」

「――えっと、」

私はまた、トリップしてきたという内容を伝えた。この説明も、二度目となると面倒この上ないな。
まぁ、サボテンになるよりはマシだけど。


「―――ふーん、でも殺さない理由にはならなくね?」

「はぁ、馬鹿ですねー堕王子は」

「てんめ、今日こそサボテン覚悟しろし!」

「遠慮しますー」

「まぁいいや、このカエルは後だ。―――で?
なんでカエルはコイツを殺さないワケ?」

そうだよ。私もさっき、それを聞こうとしてたんだよ。それをこの堕王子が邪魔しやがって。けっ。


「はー、めんどくさ。
だからですねー咲サンは言わば異分子なんですよー」

「異分子?」

「つまり、コッチの世界にいたら矛盾する存在なんですー。
だから、ミー達が軽々しく咲サンを殺せば、少なくともアッチの世界は影響受けますねー」

「影響…例えば?」

あぁ、何を聞いてるんだろう私は。
そんなこと、ちょっと学があって洋画でも見ていれば想像のつくことなのに。


「まぁ未来で咲サンが産むはずだった子孫らがまず消え、さらに過去の親も―――簡単に言えば、生態系が壊れるかとー」

まるて、宿題忘れました、とでも言うかのようなノリで。
しかし、そのスケールはあまりにも大きくて。


「それだけ影響が出た場合ーコッチに全く影響が無いとは言いきれないんでー」

殺しませんでしたー、とまたも軽口で。
万年無表情なカエルはどう思ってるか知らないが、少なくとも私とベルは開いた口が塞がらなかった。

流石にベルも“殺さなくて良かった”なんて思っ―――てないかもな、こんの戦闘狂は。


「まーとにかく、様子見ってことでー。
この城から出たら骨の髄までくってやるんでー」

よろしくー、と言われた。
よろしくしたくなんて微塵もないけどね。


「――ししっなんか面白そうだな」

何を言いやがる堕王子。

「異分子、だっけ?まーそれも面白いけどよ。ぶっちゃけ咲自体がギャグだろ」

「確かにー」

「おいコラちょっとそこのカエルと堕王子」

仲悪い癖に、こういう時だけ意気投合しないでよね。

とにもかくにも、こんな外で喋っている場合ではない。
鳥さんの手当てをすべく、城へ入った。――
一回入ったら、リアルに死ななきゃ出れなさそうだけど。


* * * * *


「ピルルッ」

「かーわいーっ!」

「…なぁカエル。女ってこういうの好きだよなー」

「ですよねー、ミーには理解不能ですー」

「同感」


なんか聞き捨てならない会話が聞こえるけど無視した。

るーさんは、ちょちょっと消毒して小さく包帯を巻いてやれば、少し元気になってくれた。
あ、“るーさん”はこの鳥さんの名前で。


「るーさん、ご飯食べたいよねー」

「ピルルッ」

「だってさ。ほら暇そうなカエルに堕王子、なんか食べ物持ってきて」

「え、王子がパシリ?」

「めんどくさ、やっぱ死ねよあんたー」


ぶつくさ言いながらも、パンを持ってきてくれた。
わわ、初めて彼らの優しさを垣間見たよ。

失礼、だけどあったかかった


なんか、マンガで見てた時より優しさとかあって。
やっぱり人間なんだな、なんて。


fin.


・・・・・・・・・・・・

随分前に書き上がっていたこの話。アップサボり←






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