私はただの学生だってば!
「ねぇツナさん」
「何かな咲」
「この格好はあり得ないとは思いませんか」
「なんで、何事も形からでしょ」
「こんな形は嫌ですが!」
「それ着るのと死ぬのどっちがいい?」
「うわぁいメイド服って可愛いなぁ!」
笑顔で言われた。
キラッキラしてたよツナさん。
ツナさん今更ながら黒!
「誰が黒いって?」
「だから心読まないで下さい本当に心からお願いします」
「しょうがないじゃん、聞きたくなくても聞こえるものは」
へーへー。
……ツナサンド食べたいな。
「俺が先に食べてあげるよ」
「何がですか?」
「咲を」
「今日はカツサンド食べたい気分ですなぁ」
会話がこんなにも楽しくないの、初めてだ。
恐怖しかないよ。
ていうかツナさん本当何者?
明らかに20歳は越えてるよね――けっ、いい大人が。
仕事してるみたいだけど、訳分かんない書類ばっかし。
「マフィン食べないんですか」
「は?」
「さっきマフィンがどうとか言ってたじゃないですか」
「………。」
ツナさんは呆れたような視線を送ったあと、ため息と共に食べないよと言った。
やめてよ。
私が残念な子みたいじゃん。
え、元から?
うんそーゆーこと言わないー。
「ときにツナさん」
「何」
「うわ、そっけな!」
「な に」
「……。
ツナさんはあの人…雲雀さんと二人暮らしなんですか」
ブッとコーヒーを吹かれた。
てかめっちゃ苦い顔で全否定されちったよ。
「ちぇ、二人暮らしだったら―――えへへへ」
「俺にはその妄想が伝わるから止めてくんないかな」
「無理ですね、乙女として」
「え、乙女ってどこにいる?」
「やめてくださいすんません真剣に探さないで」
「この変態が」
「はい私は変態ですよ!」
あれ、私初期とキャラ変わってない?
……いや、今まで楽しく会話なんてしなかったからってだけで、私の本質はこれなのかも―――やだな。
「えーと、じゃあ他には誰がいるんですか?」
「………」
「そのいかにも面倒くさいですって表情やめません?せっかくのお顔が台無しですよ」
「だって面倒なんだもん」
「もん、て」
ガキですか、なんて言ったもんだから脳天に拳をくらった。痛い。
「当たり前じゃん」
「…私の心と会話しないで」
あぁ、きっと。
ツナさんの辞書にはプライバシーって単語はないんだ。あーやだやだ。
「あ、そうだ」
「へ?」
「なんかさっきはぐだぐだになったけど」
ツナさんは読んでいた書類をバサッと机上に放置して立ち上がる。
え、なんでこっち来るんですか。
「雲雀さんの攻撃、なんで避けれたのかな」
「は?いきなり攻撃されたらそりゃ避けるでしょう」
「…。あの人の攻撃を避けれる一般人なんて見たことないよ」
「はぁ、それは私が一般人じゃないとでも言う侮辱ですか」
「違うって」
だから、―――と言ってくるツナさんは実は滅茶苦茶至近距離にいて。
ぶっちゃけ顔(だけ)綺麗な人がこんだけ近いっていうのは緊張するというか。
「―――って聞いてる?」
「っへあ?あ、あーすみません」
「はぁ…、」
うっわ、ものすごい心からため息つかれた。
「だから、俺らのアジトに侵入した上に雲雀さんと交戦なんて、本当に何者?」
いやいやいやいや。
なんか情報が美化されてますけどね?
小鳥さん追いかけて迷い込んでかっくいーお兄さん達に会って、ただ一回だけ銀色のを避けただけっすよ?
「大袈裟、なんですよ…」
「……ふぅん」
あれれ、なんか意味ありげに返答されちゃった。
と、そこへ。
なんかシルクハット被った青年?が入ってきた。
「おいツナ、ちゃんと仕事―――誰だお前」
「いや、こっちのセリフなんですけど」
「撃つぞ」
「すみませんごめんなさい!
今日から何故かここで働く咲です!」
バンッ
「っわ!!」
ちょ、ちゃんと自己紹介したのに銃弾飛んできた――――って、あれ?
これなんか…遅い。ていうか飛んでくるのが見える。
そうコンマ1秒の間に思った私は、頭を逸らして銃弾を避けた。
「「!」」
「ふー…びっくりした。
ちょっとシルクハットの君!銃刀法違反だよ!」
「いや、明らかにツッコミどころはそこじゃないよ」
「ツナ、この女何者だ」
「俺も知らないよ、ただ」
さっきも雲雀さんの攻撃避けていたし、などととボソボソ言っている。
え、内緒話ですか。
私完全アウェーじゃない。
「やっぱり咲はどっかのファミリーの刺客じゃ…」
「それはねぇな。いくら刺客とはいえ、こんなガキは使わねぇ」
「失礼!っていうか私の方が君より年上じゃないかなぁ!」
「黙ってろ。
とりあえずコイツは――」
軟禁だな、なんてありえない単語が聞こえちゃったりして。
思わずぱーどん?言いたくなったよ。
「え、な、軟禁って…」
「お前はこのアジトから出るな。
髪の毛一本出たら殺すからな」
な、なな…なんでぇええ!
fin.
・・・・・・・・・・
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