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意外性(フラン)

「キャーッ、フラン隊長ーーーっっ!!
今日もかっこいいです!!」

そう言って私は彼に飛びつく。
が、

「うざっ。」

と言われヒラリと避けられる。


……ドンマイ私。
でもこんな事じゃ挫けないぞ!


私はヴァリアーの霧の隊の隊員。

そして、幹部であるフラン隊長は、勿論この隊の隊長。
あんど
私の彼氏。


…だと思う。


何で断言できないかって言うと、不安、なんだよね。


ってわけで、

不安要因その1!!

好きです付き合って下さいって言ったら
別にいいですけどーと軽ーくOKされた事。
この時点で愛がない。


不安要因その2

フラン隊長がめっちゃモテる事。
告白されてる現場に何度出会ってしまった事か。


不安要因その3

甘ーい雰囲気が無い事。
山越え谷越えフラン隊長の部屋行ってW○iスポーツやるとかウチらどんだけだよ。


不安要ーあーもうやめよ。
ドンドン撃沈してゆく……


どうしたらいいのかなあ。
でも何かフラン隊長掴めないしなぁ。


そして今も私うざって言われてるからね?
更にフラン隊長その一言残していなくなったからね?


長ーい廊下をとぼとぼと歩く。

泣けるわ、コレは。
いや、絶対こんなとこで泣かないけどさ。

でも、泣けるわ。


その時ーーー


ガンッパリンッ

という音が足下からしたと思ったら、
体がバランスを崩す。

ヤバッ。


私は地面に手を付きくるっと宙返りをすることで転倒を免れる。
いやーあたしだってフラン隊長に毎日鍛えら
れてるんで!!

あーてか、ヴァリアーの中で転けそうになる人が先ず居ないわ。
……うん、がんばれあたし。


そして私はふと足下を見た。

するとー



綺麗な装飾が施された壺が、
見事に、割れていた。

えっと…、何だいコレは。

まるで私がやったようではないか。

やってない。
わ、私は断じてやってない、ハズ。

頭の隅から現実逃避はお止めなさいという声が聞こえる。


……勘弁して下さい。


どうしよ…。

とりあえず私の選択肢としては、


1.割れた壺を持ってフラン隊長の所へ行く。
2.壺を瞬間接着剤でくっつける。
3.逃げる。


がある。


妥当なのは明らかに1だけどこれ以上軽蔑される訳にはいかないので除外。

2は、やるかどうか以前に可能かどうかがポイントだろう。
壺を完璧に直すとか、無理、だと思う。


…一番間違えちゃった答えは3。
だけど。
もうコレしか無い。


よし!!
逃げよう!!

そう決意した私が走り出そうとしたその時

「ししっ、お前あのカエルの彼女だろ?」

という悪魔の囁きが笑い声と共に聞こえた。


………ベル隊長だ…。

て、いうか

「何で私が彼女だってご存じなんですか?」
っていう素朴な疑問。

私誰にも言ってないし?
ていうかフラン隊長に言うな、と言われたし(そこからおかしいよね?)


「あのカエル見てりゃ分かる事ね?」

「え、分かんないんですけど。」

「まあ、お前には分かんねーかもな。」

「…っと、何故ベル隊長は分かって私は分からないのでしょうか?」


どちらかと言うと人間的には私の方が優れてません?と思うんですが、

なんて口が裂けても言えないけど。


「ししっ。お前バカじゃね?

俺が王子だからに決まってんじゃん。」

えー…っと?
………まぁそう言う事で良いか。
何か言ったらサボテンにするぞオーラ出てるし。


「つかさ、この壺お前が割ったワケ?」

「あ゛。」

そうだよ。
この人の登場で忘れてたよ。

「ししっ。ヤバくね?
コレ確かボスの壺だぜ?」


うそ…。

どーすんだよ、と面白そうに言ってくる彼の声なんてもう聞こえてこない。


「え、あの、ボ、ボスって、あのザから始まる人じゃ無いですよね…?」


私のその言葉に彼は更に愉快そうに笑って

「そうだといいな。」

とだけ言った。


ヤ、ヤバい。
殺されるよ私。
お父さん、お母さん、今までありがとう。

娘は今日旅立ちます。


「…あの世へ」

「は?」

「え?あ、イヤ何でも無いです。

というか、ですね…………」


「…何だよ」


急に黙った私に彼は疑問があるようだった。

「…っと、その、
…ど、どうしたら良いと、思います?」

「それオレに聞く?」

ですよね…。

彼だって幹部。

こんな事に巻き込まれるワケにはー
「まあでも、協力してやろうか?」

え。

「い、いいんですか?」
「いいワケないじゃん。」

「で、ですよね。」

何なんだこの人は。
訳が分からない。

しかし、落胆の色を見せる私に、彼は



「だから、オレとお前で秘密裏にやんだよ。頭悪いな、お前。」



と言ってきた。


それってもしかして、私をー
「あ、お前助けるためじゃねーし。

つかさ、お前名前は?」

話飛ぶし、酷いこと言うなこの人。

でも

悪い人じゃないのかも。


「なまえです。

よ、よろしくお願いしますっ。」

私は感謝の意も込めてペコリと彼にお辞儀をした。

「しししっ、こちらこそ。
じゃあとりあえずどーすっかな。」

そう言ってナチュラルに私の肩に回されたのは彼の手。


ーーーっ!?


何で?
どうやったら今の流れでソコ行くんですか!?

私の顔がボッと赤くなる。

しかしベル隊長はそんな事お構いなしに
「とりあえずこの壺の破片オレの部屋持ってくか。」
と平気な顔で言う。



…もしかして、と私は思う。

今まで知らなかっただけで
本当はイタリア人ってスキンシップが激しいんじゃないかな?
私はイタリア生まれじゃないから、今初めて知ったとしてもあり得る。

うん、そうかもしれない。
ベル隊長、王子だし。


じゃあ、此処は拒否の反応はしない方が良い訳だ。
(…まあ拒否なんてしたら殺されるから選択肢一つしか無いんだけど。)


「そうですね。じゃあ運びますか。」

そう言って私はどこかに破片を入れられる大きな袋は無いか、と辺りを見回して―――目を、見開いた。

「何してんですかー?」


  フラン隊長が居る。


ち、ちょっと待って。
私肩抱かれてんだけど。

そう思って慌ててベル隊長の手から逃れようと試みた。
しかし、何故かベル隊長が肩を抱く力を強くしてきたが為にそれは叶わなかった。


な、何で?
いや、…っと逃がして欲しいんですけど。

やっぱり訳が分からない人だ。

でも、今はそんな理由でそれを諦めている場合ではない。


そう思って何度も脱出を試みる内に首に冷たい感触。

――ナイフッ!?


ななな、何で?
と私が驚きの目でベル隊長を見ると

「鬱陶しいから動くの止めてくんね?

殺すぜ?」

とニヤリと笑った。
こっちも見ずに。

ベル隊長の視線はフラン隊長を捕らえたまま。

その横顔を見ていた私は、
あ、この人肌キレイだなーと突発的に思っていた。

そんな中フラン隊長が口を開く。

「何やってんですかー堕王子。」

「てんめっ。
堕王子じゃねーっつーの。
つか見て分かんねえのかよカエル。」

「…見たままって事ですねー?」
二人の間にバチッと火花が飛ぶ。


「いや、ていうか見たままじゃないですよ?
それは誤解で―――」

そう言いかけた私は
ナイフが一層強く当てられたのを感じ、本能的に口をつぐむ。

「まあ、アレですねー。

ベルセンパイは女を見る目が無いって事で。」


――ちょっ!?な、何言っちゃってんですか?
酷くないですか?

確かにこんな人達に絡まれる程の素敵な女性ではミジンコ程も無いですけども。


「へーえ。良く言うぜ。
しっかり愛しちゃってるくせによ?」

「…え?あ、ベル隊長、それは残念ながら違います」


絶対愛されてないし。

言い切れる所ドンマイ…。


「ししっ。違うってよ。
お前どんな接し方してんだよ。」

「…センパイには関係ありません―。

なまえ、さっさと付いて来い―」

…命令形。
珍しい。


ていうか、ベル隊長さっきから何言ってるんだろう。

そんなラブラブカップルじゃないですよ。
残念ながら。


「あ、なまえ壺どうすんだよ?」

忘れるとかバカじゃね、と言うベル隊長の声に
私は振り向いて、あ゛、と言おうとした。


けれどそんな私の腕をフラン隊長がガシッと掴んでグイグイ進んで言ってしまう


「あ、あの、フラン隊長?

私、実は壺割っちゃって、だから――」
「五月蝿いですー。」

黙って下さい、と言われる。


そんな事言ってもアレはXUN―、ザから始まる超怖い人の壺な訳で。


フラン隊長はそんな私の心の内を読んだかの様に

「大丈夫ですからー」

と言った。

…その自信はドコから来るのでしょう?


というか、
「腕痛い…です。」

するとフラン隊長は、あ、と言って
手を即座に離してくれた。

「赤くなってますねー…。
すいません。」

「―!?…謝られた…。」

フラン隊長の意外な言葉に私はつい、そう漏らしてしまった。


「…本当、ムカつくし、バカですよねなまえって。」


…うっ。
分かってますけど……ねぇ。


「なまえバカだから、

ミーがわざわざシンプルに言わないと伝わらないんですよー。

あーめんどくさ。」



酷いなあ。

慣れてしまった私も私だけど。

だって会う度に何か言われるんだもん。


「というか、何をシンプルに言わなきゃいけないんですか?」

…お前可愛くないー、とかですか?

ソコがshoudn'tの言うだったら私達終わりですよ?


「何を、ねえー。

そうだなあー。……なら、えいー。」


その声と共に彼に引き寄せられた私の体。


「…いや、な、何で…?ていうか」
「ハイ五月蝿いー。

てか、何でミーが陽の事好きじゃ無いって思ったんですかー?」


ちょ、待って…。


どういう経緯で、こうなったんですか…?
さっぱりだ。


それよりも耳元で喋るの止めて…っ。

いい、息掛かってますって――っ。


「え、いやそれは…だって隊ちょ―。」
「まあ、何でも良いんですけど―。」


んなぁっ!?

流石に抗議してやろうと上を向いた。


「………。」


目がバッチリ合った。
き、気まずい。

そう思った私はパッと視線を反らす。


「…何逃げてんですかー?」

あれ、機嫌悪い?
…少し怒ってるような…?

どうやら、私が視線を反らした事が気に食わなかったらしい。

「…」

「…」

ち、沈黙。


こういう時は(多分だけど)先手必勝がポイントのハズ。


……謝ろう。


「…視線反らしてごめんなさい。」


「ホントですよー。」

く、口の減らない……。


でも、と彼は続けた。

「何で堕王子なんかと一緒にいるんですかー…。」

「あ、いや、あれはたまたま…。」

「堕王子に会ったら逃げろって教えましたよねー?」

…それ絶対嘘でしょ。

「あ、信じてませんねー?」

何でもホイホイ信じてたら私が終わるんで。

「まあいいですー。ミーは陽と違って心広いんでー。」


ホント毒舌だね!?


「でも、次あの堕王子と二人きりになったら許さないんで。」

よろしくー、といわれた。


よろしくされても…。



「というか、何でベル隊長と二人きりはいけないんですか?」

普通に良い人だと思う。

ナイフ投げなきゃだけど。


「本当、もうちょっと頭動かして下さいよー。

あの堕王子が人の為に動くわけ無いじゃないですかー。

しかも肩抱かれてー、部屋連れ込まれそうだったしー。

見てらんないしー。」


部屋連れ込まれるって、壺持ってく為に行くぞって言われただけなんだし…。

そんな心配しなくてもなぁ。


ん、心配って…。

んあぁぁぁああーーーーーー!?


「心配、してくれてるんですか…?」


フラン隊長が一瞬ピクリと動いたのが体に直接伝わる。

そしてその後彼は、はぁー、と息を吐きながら


「当たり前じゃないですか。


だってなまえはミーの、彼女なんですから。」


だから、余計な虫を付けたくないんですよー、と彼は続ける。


「かかか、かの、じょ…。」

「平仮名で喋るの止めて貰っていいですかー?

更にバカっぽく見えますんでー。」

「それ彼女に言う言葉じゃないよね?」

「いやー、頼みますよー



彼氏のミーの為にもー。
なまえとミーはペアで見られるんでー。」



「ーーーっっっ!!

そ、そんな事平気な顔でいわないでよーーっ!」


あーもーっ。

でも、少しフラン隊長から体を離して彼を見ると、


無表情な彼が、少し笑っているような気がした。

珍しい。

嬉しい。

そんな事を考えていたらその顔が近づいてきた。



キスされる、と感じた。



でも、さすがフラン隊長。


もう唇が触れ合う、という位置で

「ミーはなまえの事、

大好きなんでー。」

と囁いてきた。


そして唇を近づけたままで

「なまえはどうですかー?」

なんて言ってくるから



「私は、フラン隊長の事

愛しちゃってるんで。」



と言ってやったら、


やっぱバカですねーと鼻で笑われた後




彼は私に唇を押しつけてきた。




******


「あの、ちょっと気になることがあるんですけど。」

そう言った私は今、

フラン隊長の足の間に入れられ、背後から抱きしめられている。



何なんだこの急展開。

どうしたフラン隊長。



「何ですかー?」

「私、壺を割ってしまったままなんですが…。」

「あー。大丈夫大丈夫ー。」

「だからどこからその自信が来るんですか。」

「…何かツッコミ厳しくなりましたねー。」


何だそれ…。
…意味分からん。


「掴めないところベル隊長に似てますね…。」


そう言ったらフラン隊長は一瞬黙ってその後

「この空気でそれ言うのってー」

絶対間違ってますー、

と言った後無理矢理私の頭をぐりっと回してキスしてきた。


「……っんぅっ……っ」

幸せー、なんだけど



痛いーーーーっっっ!!



首ーーーっ!ぐりってなってるーーー!


そういえば、何だかフラン隊長さっき声が嬉しそうだったような…。

******


あーよかったですー。

何とか誤魔化せましたー。


あの壺、本当はミーが先に割っちゃってたんですよねー。

堕王子に絡まれたせいで。
あ、堕王子が悪いんですよー?


でもそんなマヌケな事教えたくないし。


種明かしするとあの壺、ミーが幻覚で出してたんです。

勿論、一概に幻覚と言っても有幻覚ですよー?

大変だったんですけどー、怒りんぼのウチのボスに殺されるよりマシなんで。


「ってわけで、あの壺もう直ってますんでー。」


そう言いながら陽を漸くキスから解放してやった。

さっぱり意味が分からないという顔をしているそのアホ面が


何だかとても愛おしくて



ミーはもう一度なまえにキスをした。



・・・・・・・・・・・・・・・・

満千、ありがとう!!

フラン可愛いよぉぉお!





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