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ばにらかぷちーの。(ザン)

「ボス、ボス」

「なんだ」

「コーヒー淹れましょうか」

「あぁ」


ばにらかぷちーの。


数年前、暗殺部隊であるヴァリアーのボスでさるXANXUS様と出会った。
何が気に入られたのか、ほとんど一般人な私は秘書として迎えられた。

ここは楽しい。

本当にどこかの国の王子らしい似非王子クンやお母さんみたいなオカマさん、毒舌絶好調なカエルに五月蝿すぎる鮫。
…あれ、なんか一人忘れてる。まぁそんな感じで。

ぶっちゃけ最初は“何なんだこの人達”って思って。
平気で人を殺すだけの集団なんて願い下げだったのだけど。
なんていうのかな、この人達は。必要悪、って言ったらカッコよすぎなのかもしれない。
でも、そんな感じ。

本当に悪い人なんていないし。――――あ、サボテンにしたり幻覚パラダイスにならなければの話ね。

まぁでも、家事は嫌いじゃないし何より充実してるから。
ボスに感謝感謝、感謝セール開きたいくらい。


「はい、どうぞ」

今淹れたはかりのブラックコーヒーをボスに渡す。
あんなボンゴレのボスの腹の中みたいに黒い液体、よく飲めるなぁ。


「…おい、何だそれは」
「え?」

ボスの視線を辿れば、私の手元に行き着き。
そこには、私が飲むために淹れたバニラカプチーノ。
甘くてあったかくて、冬の必需品。


「…私のマグカップですが」

冗談言ってみる。――やめて、そんな目で見ないで。


「んなこと聞いてねぇ」

「バニラカプチーノですよ」

「………」


…うわわ。めっちゃ見られてる。凝視されてる。
カップを穴だらけにする気?
っていうかその前に私が穴だらけになりかねないんだけどね!


「…飲みたいですか?」

そう聞けば、コクンと小さな頷きが返ってきて。
うは、可愛い!あのボスが“コクン”だって!
あぁ可愛い!


「どうぞ、あ、全部はダメですよ」

「…ふん」

ボスはカップを受け取って、コクリと飲んだ。


「クソ甘ぇ」

「とか言いながらちゃっかりしっかり飲んでますね。素直に美味しいって言えばいいのに…」

「うるせぇ、かっ消すぞ」

「わぁ怖い」

感情を込めずに言う。無意味に殺さないって分かってるから。――殺しかけることならしょっちゅうな気もするが。


「っていうか、そこ」

「あ?」

「私が口つけたんで、間接キス、」

なんですけど、と気まずそうに言えば、なんか鼻で笑われた。地味に傷付く。
 
「てめぇ、そんなこと気にするのか」

「まぁ一介の乙女ですし」

「俺の目にはその乙女とやらは見えねぇな」

「ひどい」

あ、また鼻で笑われた。もう私泣く。
そんなブルーな思考にボスの声が割って入ってきて。


「ちょっとこっちこい」

「はい?」

今、私とボスとの間隔は3、4メートル。別に遠い距離でもない。……はて、これ以上近付けと?


「かっ消さないで下さいよ」

「するか」

その言葉を聞いて少しばかり安心して、とことこと近づく。――――瞬間。


「ぅわっ?」

手首を思い切り引っ張られて、引力に逆らわずそのまま前に転倒。


「痛……くない、けど」

ボスに倒れかかってしまった。っていうかこのクソボ――この人が私を引っ張ったんだけどね?
私に非はないはず、うん。
じゃなきゃそれこそかっ消される。


「えと、すみませんでし――っ」

とりあえず謝るか精神で顔を上げれば予想以上とかそういうレベルではないくらい顔が近くてびっくりした。

「ハッアホ面」と言われ、反論をしようとした口を塞がれた―――あろうことか、ボスの、口で。
 
「んー!はふほぉー!」

「うるっせぇカス!」

キスん時くらい黙れねぇのか、なんて理不尽極まりないこと言われた。
いや、いやいやいやいきなりキスされて大人しくしてる人はそういないでしょうよ。

てか、私ってボスの恋人か何かでしたっけ?
え、じゃあ私って恋人を“ボス”って呼んでた?―――いや、違うな、絶対。


「甘いだろ」

「はい。―――――はい?」


甘いのは好きですか


どきどき、こんな甘さハジメテ。


fin.


・・・・・・・・・・・・


意味不明ワールド展開w





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