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彼と彼女のファンタジーな展開2(フラン)

※逆トリ設定


鳥がさえずる声が聞こえる。
いいなぁ鳥、学校無いし。

分かってる、分かってるさ。
私は人間。
ちゃんと現実逃避なんてしないで学生の本分を果たしますよ?


――さて、フランを起こさねば。
えへへ…マイ彼氏なのですよ。
昨日は私の部屋に泊まったのだ。

あ、ウフフなことはしてませんから!


てか、なんだろ。何か違和感を感じる。
私って視点…こんな高さだっけ?いや、ていうか根本的に何かおかしい気が――。



「とりあえず、フラ――――!?」

「はー…?
もー何なんですか、朝から五月さ―――っ?」


え、ぇえ?え、ちょ何何何。
ちょっとってか、いや、かなり待って欲しいかも―――いやいやあり得ないでしょコレは。

なんかもう1人私がいるんだけど?


「――え、えっと?」

「なまえサン…なんですかー?」

「え…あ、うん。フラン、なんだよね?」

「はいー…」


うわぁ…。
多分だよ、多分だけどきっと確実な推理。
そして鏡を見るまでもない、今の自分の姿などなど。

―――まぁつまるところ。

どうやら私はフランと身体が入れ替わったらしい。
 彼が彼女で、以下略。


何はともあれ、学校に行かなくては。


「なまえサーン」

「なによ」

「スカートがスースーして気持ち悪いんですけどー」

「その気持ち悪いのを私は毎日穿いてるんで」

「ジャージ下に穿いていーですかー?」

「うん君得意だよね、無視」

「それほどでもありますー」

「どっちだよ…ってか誉めてないから」


のそのそとスカートの下にジャージを穿くフランもとい私。
別に禁止されてるわけじゃないからいいんだけどさ?

――まぁこの際、ジャージ穿く穿かないなんて些細なことだからいいんだけど。


* * * * *

「あ、おはよーなまえ、フランくん」

「おはよー……ございますー」

「……」

ちょ、人がせっかく頑張ってカエルの真似してんのにさ。
自分は無言ってどーなわけよ?
てか無表情すぎるよ、私の顔!


「え…、」

そんな風にフランに心中で毒づいていれば、挨拶を一番にくれた友達が目を見開いてこちらを凝視していて。
――あれ、気付かれた…?


「何ですかー?」

「あ、いやっ別に大したことでもあるようなないような…っ」

意味不明だ。
 

「いや、うん。
今フランくん笑ったように見えたからさっ」

いやー初めて見たよ、などと言って軽快にカラカラと笑う目の前の彼女。
同時にフラン(私)のジトッとした視線が横から送られる。受け取らないけどね!


じゃねーっ、と去っていった友達を見送り。
私とフランは席に座って(お隣さん)ボソボソ会議。


「…ちょっとなまえサンー
気付かれたらどーしてくれるんですかー」

「へーへー、すみませんでした。」

いつも無表情なカエルが悪いじゃないかっ!私には無理だよ、無表情なんて絶対笑い出しちゃう。

そんな議論をしているうちに一限目の授業である数学が始まった。


* * * * *


授業も残すところあとひとつとなった。
内心、もう終わった気分だった。

しかし。


「なんで体育ー!」

「あれ?フランくんってそんなに激しい人だっけ」

「え、あ、あー気にしないで下さいー…」


危ない。つい叫んでしまった。
あう、今日何度目かも分からないフラン(私)からの睨みが痛い!
ていうかね。別にフランはいいじゃんか、女の子の下着姿見れるんだから、良かったねー。
 
でも私は絶対無理!
だって男だらけのむさ苦しいところで着替え?冗談は先生のハゲだけにして。


「…だから何とかしてよフランー…」

「…こっちを何とかして欲しいくらいですよー」

またボソボソ会議。

「いーじゃん、フランは女の子の着替えを堂々と見れるんだよ?
むしろ良いくらいじゃん」

「はー?嫌ですよあんな化粧とかの臭いにまみれて着替えなんてーうえぇぇ」

「ぎゃー!そこまでリアルアクションしなくて良いから!」

「は、幻覚にきまってますー」

ミーはどっかのボス溺愛してる人みたく醜い真似はしませんー、なんて言いやがった。


「ちょっとなまえー?
大好きな彼氏クンと喋るのもいいけど、着替え早くしないと遅刻になるよ」

「え、あ、あぁー…」

フラン(私)はこちらに助けを求めるような視線を送りながら、更衣室へと消えた。へ、ざまぁ。


「――っと私はどうするかな」

フランは教室内では異色。
だから別に着替えようなどと誘ってくる輩もいない。フランの性格万歳。


―――トイレででも着替えるかな。


*** * *


「う゛ー…」

「あは、ドンマイ」


 
歓声がした方に目を向ければ、フラン(私)が8段の跳び箱を跳んでいた―――アクロバット付きで。


「ちょ、フラ…じゃなくてーなまえー!」

「何ですか」

「そんな超人ちっくに跳ばないでよ!」

「ただ跳ぶだけなんて暇にも程があるんで」

「フランの暇事情なんてどうでもいいよ!」


えー、などと不満の声をもらしながらも、また華麗に跳んだ。

『おぉー!!』

「だからせめて普通に―――あぁもう今さら後の祭りかー」

はて、後の祭りというのはこういう時に使うのかどうかはさておき。


「あれ?フランくんはやらないの?」

「え、」



* * * * *


「なまえサーン」

「何よ分かってるってばすいませんでした!」


あのあと私(フラン)は、無理矢理跳ばさせられて跳び箱台を崩しながら派手に失敗したのだった。
不幸中の幸いとでも言うべきか、そこで授業は終わったものだから、ダッシュで帰ることにした。

あ、終礼放っぽっちゃった。


「まさかあそこまで運動音痴だったなんてー」

「だから悪かったって言ってるじゃん」
 
もう私達は慣れないことばかりで体力的にも精神力的にも限界だった。
ヘロヘロで、二人してボーッと歩いていたのがいけなかったのだろう。
この際、恋人同士でちゃっかり手なんかを繋いでいたことも不運の内なのかな。

あぁ、今日は厄日だ。


「――――っわー」

「――へっ?あぁああー!」

私が蹴つまずき、フランを道連れにして階段から落ちた。


「う…いったぁー…」

「ミーとしたことが…」

幸い、落ちたとは言っても6、7段であったため、怪我をしていたとしてもせいぜい打撲ぐらいだろう。
打ちつけて痛む背中を擦りながら立ち上がる。

そこで、また、違和感。


「…あれ?私ってさっきまで学ランだったよね」

そりゃそうだ。外見はフランだったのだから。


「…ミーってさっきまでクソ気分悪いスカート穿いてましたよねー」

一言余計だ。

「え…でも今はスカートってことは」

「ミー達、元に戻れたみたいですねー」

「え、まじ?ひゃっほい!」

「……」

「あー良かった良かった、あのままじゃ不便すぎたもん」

「まぁそうですがー」
 
「それに、その…ほら。」


キスとかもしにくいよね、なんて冗談半分に言えば面食らわれて。
刹那、唇に柔らかい感覚を覚える。


「―――」

「…別にミーはあのままでもキスしてましたけどー」

「ば、バカガエル!ここ外なのにー…」

「あ、でもその先をヤっ「はいはいはい!」

真剣に考えられた。


「まー戻ったから良かったってことでー」

「…そーだね」

「やり放題ー」

「うん、何がかなんて聞かないからね」


元の姿が一番


なんだかんだ、私をちゃんと見ててくれたんだよね。


fin.


・・・・・・・・・・・

本当は数学の授業中も書きたかったけれど、字数的に断念←

いつか、続編か何かで機会があれば…!


 





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あきゅろす。
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