かぜひきフロッグ。
「…ゴホ」
「うっわ38度8分!
こりゃ完全に風邪だね、ドンマイ」
てかこの毒舌カエルくんは人間だったんだね。
いやぶっちゃけ、ボンゴレとかヴァリアーの中で一番あり得ないのは霧――つまるところ幻覚だと思ってたからさ。
そんなのを使う化け物でも風邪なんか引くんだなー、みたいなね。
「なんか今ー無性に和奏サンを殺さなきゃいけない気がしてならないんですけどー」
「べべ別に、あんたのことを“人間離れした怪物が風邪なんか引いて吃驚”なんて思ってないんだからね!」
「ツンデレ死ねよー」
それは聞けぬ頼みですなぁ、などと誤魔化しながら部屋から出た。――はて、ツンデレとは。
リビングに行けば、運のいいことにお母さんは買い物に出ていて。
鬼の居ぬ間になんとやら(違う)で、簡単にお粥を作ってあげた。
自分でお粥作れたことにびっくり。
意外に簡単なもんだねぇ。
作りたてのお粥をおぼんに乗せて部屋に運ぶ。
ベッドに寝かせてあるフランは柄にもなく弱々しくて。
「はい、優しい私は風邪っぴきカエルくんにお粥を作ってあげたよ」
「うわ、ムカつくー…ゴホ」
「ほら、喋らない。悪化されても心底困る」
「そこまで露骨に嫌な顔しなくてもー」
「嫌だもん。親にバレたらどーしてくれるのさ」
「只でさえ普通の顔が崩れますー」
「無視かよ、てか風邪のときくらい毒舌やめい」
とにかく食べて薬飲んでもらわないと。
私にまで移ったらどうしてくれんのさ。
てな訳でお粥を差し出す。
「あーん」
「…え、何その口」
「だから、あーん」
「……」
やっばい、可愛い!可愛過ぎる!
え、ちょ、男でこれ程までに“あーん”が似合う奴がいたのか!
「…くれないんですかー?」
うっわぁ、しょげた!
熱でほやほやしてる上にしょげたよこの子!
うわぁあ凄い殺傷力!
てな感じにアホな妄想(そんなつもりは微塵もない)してたら、早く早くと急かされたので、ちょっとドキドキしながらも、お粥を掬った。
「は、はい…あーん」
「あ「ちょっと和奏ちゃん回覧板を……あら」
「おっおおおお母さん!?」
え、えぇ、ちょ!まってまって!
なにこの急展開。こんなの予定に無い(当たり前)。
「………あらあらー?」
私が悶々と考えていれば、お母さんからの間抜けな声。
「もう、彼氏できたらお母さんに一番に報告するって言ったじゃない!」
「彼氏ノー!」
...
「彼氏の?彼氏くんの、何?」
「だからこれは彼氏なんかじゃない!」
カエルだよ、と真剣に言えば、お母さんとフランの双方に小突かれた。
なんでよ。
「外人さんかしら」
「イタリアから来ましたーママさんよろしくお願いしますー」
「礼儀がなってるわねぇ、よろしくフランくん」
「ちょっと待たんかい!!」
なに、二人でナチュラルに話進めてんの?
私無視だよね。酷いよね。
「だから、フランは彼氏じゃな―――むぐぐ」
「ミーちょっと風邪引いちゃってー。
移すと悪いんで、」
その……、とフランが口籠っていればお母さんははいはい、と察したかのように出ていってくれた。
「――ぷはっ、何してくれてんの」
「余計なこと言う口を塞ぎましたー」
「そんなことは聞いてないわよ」
「あ、もしかして口で塞いで欲しかったですかー?」
「いっぺん埋まれ」
このカエルは変態か。あ?
そう簡単に乙女の唇奪われてたまるかってんだ、へっ!
「――なにキョロキョロしてんのよ」
「えー乙女なんて何処にいるのかなーと」
「1人しかいないでしょ!?」
「あー和奏サンのお母さんでしたかーじゃあ今はいませんねー」
「うっざ」
誉め言葉どーも、なんて言われた。誉めてない誉めてない。
「てかなんで私の彼氏設定にしたわけ」
「和奏サンの反応が面白いからー」
「うざ、まじでうざい」
「冗談ですよー。
だってー学校はアレで誤魔化せましたけどー」
あぁ、従弟ね。
「家はそうはいきませんからー彼氏が妥当かなーと」
「ふぅん…」
なんだ。カエルなりに考えた上の言葉だった訳か―――流石に、友達の立場は緩いよなぁ。看病するには、さ。
「ま、いいや。さっさと寝なさいカエルくん」
「だからミーはカエルじゃありませんー」
帽子がカエルなだけですからー、と言いながら目を閉じた。
しばらくすれば、スースーと静かな寝息が立って。
私の前で寝てくれるんだ、とちょっぴり安心していたり。
暗殺者は人前で寝ないらしいから。
その辺、心許してくれてるんだな…えへ。
お母さん、彼氏ができました
彼氏、かれし―――うん。
響きいいよね!
fin.
・・・・・・・・・・・・
はて、暗殺者はまず風邪引くのかという疑問は無しで←
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