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短編小説



八木は裸の女の人をそのまま玄関から放り投げる

可哀想だとは思ったが

その方が俺にとって都合が良い


八木が俺なんかと付き合ってたなんて知ったら

八木への評価が下がってしまうから



でもさすがに裸はないだうと思い

俺はこっそり台所の窓から服を放り出した




「座れ」

ダイニングにあるソファにすすめられて

俺はソファの隅に体育座りする



半裸状態の八木は服も着ず

俺のすぐ隣に座ろうとする


「服…着ろよ…」

情事の匂いが消えないその姿で俺に近づいて欲しくない

八木は大きなため息を吐く

それだけの事だけなのに体が飛び跳ねる

嫌われたんじゃないか…怖くなる

八木はそのまま俺と一人分距離をとって座る


「で?なんだ俺の浮気に怒ってるのか?嫉妬か?」

八木は楽しそうに俺に言う

それだけ俺と別れたかったのか…

俺は悲しくなって更に顔を俯かせる


「違う…文句なんてない…」

付き合って“もらっている”分際の俺が文句をいうなんておこがましいだろ

正直さっきの女の人の方が八木にはお似合いだ



黙って俯く俺を八木は不機嫌そうに見つめる

見えてないけど空気で分かる

八木が怒ってるって


“だったらなんで来たんだこのクズが”的な?

あっ八木はクズなんて言わないか…


早く用を済ませて部屋を出よう


さっきの女の人が玄関で待っているかもしれない



俺は俯いた顔を上げ八木を見る


真っすぐ八木を見たのは何ヶ月ぶりだろう

じっと俺を見つめる視線に耐えきれなくなり

俺は目を閉じ深呼吸をする

うん大丈夫

俺は頑張れる…

俺はもう一度目を開け八木を見ている


「しゅん…いち…」

八木はビックリしたように俺を見る

驚くよな

俺…八木の名前一度も呼んだ事ないもん



ずっと呼びたかったけど

イヤな顔されるんじゃないかって怖かった

でもこれは最後

だから言える


「キス…していい…?」


最後ぐらいお前に触れていいだろ?


もうこんな事しないから…




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