ババヌキ閉
先に動いたのは銃持ちのガキA。
回転式拳銃で、あれは44マグナム弾だ。おーおー。カッコつけて片手持ちなんてして。撃つのは今日が初めてかい?
敵がトリガーを引く瞬間、指に力が入り、身体が硬直するのが視えた。私は溜息混じりに横へ大きく三歩とんだ。
腹の底を殴るような音が鳴る。
「ぐああっ!?」
私の横三メートルを通り過ぎる弾丸。漫画じゃないんだ。あんな細い、しかも片手でマグナムの反動に耐えられるわけない。持ち方も赤点。
銃に派手な威力なんて要らない。
銃口と腕の軸線が重なるように両手で握り、両足を等間隔に開く。伸ばした両腕を身体の中央へ、二等辺三角形を構成するように構える。拳銃を使う時の代表的なスタンスの一つ。アソセレス・スタンスってやつだ。
また、引き金を引く。
人間はイモータルじゃないんだ。殺すのにシルバーブレットも要らない。シルバーチップは好きだけど。
頭に当てるだけで済む。
はい、デジャヴュ。
標的との距離は10メートル前後。そして両手持ち。滅多な事が起きない限り外しはしない。
まあ、角度が一度狂うと0.175メートル擦れるから素人には難しいだろうね。
「だから素直に道を」
木刀トリオが纏めてこっちに向かって走る。私は慌てずに三度引き金を引いた。
「あぴゃ」「ぐげ」
私から見て右の馬鹿の胸に2発命中。転倒。真ん中の屑の腹に1発命中。転倒。無視する。左の阿呆は好機と思ったのか、笑っていた。仲間が死んで笑っているなんてね。
この距離だとさすがに拳銃は不利だ。私は右手にP226を預け、左手を空にする。
ガキが木刀を縦に振るう。私は半身になって避けた。
空気を虚しく切る木の刃。
ガキは横薙ぎに追撃しようとするが、私がソレを許さない。
呼吸を調整し、ガキの頭目掛けて、左の掌を放つ。
「ふっ!」
頭を打つ固い感触は一瞬。ガキは2メートル近く吹っ飛んだ。
首の骨を折り、ダウン。はい。退場。コレはちょっとしたテクニックだ。私は強化のルーンなんて使えないからね。女性。つまり私の筋力は男性の7割しかない。普通に接近で戦えば負ける。
正しい身体の動きをしなければ。
左足の踏み込みから腰を回転させ、肩が連鎖で回転。エネルギーが加速し増加する。リレーのバトンのように繋がれた破壊力は拳へ集まり、一気に爆発するのだ。
「殺人嗜好は無いんだよ」
自分の生活を邪魔する奴だけ殺す。
ここでは普通のルールなんだけどね。
「あら」
一人立ち上がる。木刀の男だ。考察。厚いジャンパーから結論。へー。あいつ防弾だったんだねー。
知ってたけど。
咳込みながら周りを見て青ざめている。あっ吐いた。汚ねー。
「目は覚めたかい坊や?」
男は私に背中を向けて走る。逃げるの?
「おりぇが、俺がかたかたかたきうを〜」
最初にお亡くなりになった奴から散弾銃を掴み、震えまくって構える。血溜まりに浸かってないし、発砲は可能だろう。
「おいおい。私には勝てないぜ?」
私は前方へ疾走し、ガキとの距離を縮める。引き金が引かれると同時、さらに一歩、大きく踏み込む。
遅い!
この距離で散弾は広がらない。たやすく避けられる。
当たるわけないだろ。
私は慌てずに銃を構える。弾丸が頭を正確に貫く。
「今度生まれてきたら幸せになりな」
まあ、聞こえてないだろうけど。
「あらあら」
後ろから足元。近付いてくる。なーに、こいつも防弾?不意打ちってわけ?
振り返って木刀のガキと対面。
安い防弾だな。半分死んでいる。9oパラベラムの威力が中途半端に伝わった腹には、真っ赤な向日葵が咲いていた。
「よう。男前」
喉に血が溜まっているのか、何言ってんのか分からない。
私は一歩下がり。前髪に風を感じる。
そんな泣きそうな顔するなよ。
「GOOD、Bye、BAPY」
フルメタル・ジャケットは貫通するのに秀でた弾丸だ。これを使って私は頭を撃ち抜く。小さな穴が開き、その男は前のめりに倒れた。
「今度生まれて以下略」
『ゴミ』掃除は野良犬・猫・鳥・狼・熊がやってくれる。食えない物は他の住民が剥ぎ取りに来るだろう。
マガジンキャッチボタンを押して、私はP226の弾倉を抜き、新しいのと交換。起きた撃鉄をデコッキングして、ホルスターに戻してから帰宅を続行した。
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