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ババヌキ途

花火パーティーをやっていたのは、高校生ぐらいの男5人だった。小汚い身なりに、こけた頬、ギラギラした野良犬の目。おそらく、上で居場所を無くした連中だろう。わざわざこんな所まで堕ちてくるなんて御苦労なこった。

得物は木刀が3人、散弾銃が1人、拳銃が1人。

「く、食い物だ!殺されたくなかったら食い物持ってこい!!」

「金もだ!早く持ってこないとぶっ殺すぞ!」

ピーピー騒いでいやがる。他の住民は慣れたもので、そそくさと室内に入ったりして身を隠していた。私は、そうせず、『家』に向かって歩を進めた。

「あん」

糞ガキ共の1人が私を見付けた。つられて残った4人もこっちを向く。
すると全員が下品な笑みを浮かべ私に近付いてくる。

「やー、お嬢さん。君独り?良かったら俺達と一緒にこない?」

「そうそう。仲間は多い方が楽しいよー」

「つーか日本語分かる?ハアイ、アイキャン×××××××××」

「右手に握ってんの拳銃?撃ち方分かんの?」

「言葉通じないなら体で教えてあげようか。へへへ」

絵に描いたようなマヌケの腐れのクズ。

「日本語は話せる。私はあんたらに付き合っている暇なんてない。そこをどけ」

せめての私の最終宣告。
強がりと勘違いしたのか、全員が笑い出した。頭の中では上と下のどっちの口に入れるかを考えているだろう。

1人を除いて。

「・・・・・・いつまで無駄話してんだ」

馬鹿5人集の中でも一際身体が大きく、目をギラギラさせた奴だった。うわ。あんな骨董品どこで買ったんだ?

男が握っていたのはウィンチェスターM1897。名前がそのまんま開発年。第一次大戦時にアメリカ軍が使っていた散弾銃だ。装弾数は5発で、12ゲージ。この銃はポンプアクションの代名詞とも呼べる名品であり、スチール製のフレームで耐久性にも優れていた。

惜しむとしたら、撃鉄が露出したせいで、装弾時にレシーバー下面からメカニズムの一部が突き出してしまう点。ただ、これも後継機のM1912で改善されている。

「女なら犯せばいい。金目の物は全部貰う!こんな場所だ臓器も売れるぞ!」

ありゃー、ジャンキーだ。目の焦点合ってないし。

そいつとの距離は目測で8メートル。

「ヘイ、ボーイ」

ジャコンとポンプをスライドさせ、男は引き金を、

「邪魔」

引けなかった。

「危ないよ。私が死んじまうじゃないか」

私が両手で握っているP226の銃口から硝煙が上がる。その時には既に、男の下顎を円頭(ラウンド・ノーズ)の銅被甲(フルメタル・ジャケット)弾丸が貫き、命を刈り取っていた。鈴にも似た音を鳴らして落ちた空薬莢は、短い、せめてもの鎮魂歌。

味はどう?美味しい?舌は痺れた?ガクリと膝から崩れ、男は重量に従う。散弾銃は下敷きになる。
頭の部分からまだ温かい血が溢れ出し、赤い華を咲かせた。

静寂の中、私はめんどくそうに言う。

「はいはーい。皆さーん聞いてくださーい。私は家に帰りたいだけなんで邪魔しなかったら危害は加えないんですよー?」

至極丁寧に言う。これは嘘じゃない。

けど、悲しいかな。

「テメエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」「よくも殺りやがって!」「こっちは4人だ!半殺しで捕まえて犯し尽くしてやる!」「殺せ殺せ殺せー!」

どうやら、掃除をしないといけないらしい。

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あきゅろす。
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