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おはじき開

鼓膜によく響く、ソプラノボイス。あれ?聞いたことあるな。

「お前もしかしてヨシュノ?」

予想より随分若い。14、5歳の『乙女』だ。南米系の顔立ちで、肌は小麦色。灰色のセミロングには緩いウエーブがかかっている。
白のミニスカとキャミソールは歩くだけで下着が見えそうなほど。わざとか?あまり色気はありませんよ?
口調からして怒っているんだろう。目を年相応子供っぽく吊り上がっている。なんだか猫みたいだ。

そして、肩にはバイオリンケースをかけていた。

「そうだし〜。この私がヨシュノ・カラドボルグ。巷で有名な狙撃手なのよん。ってよりなんで私を抜かして始まってるわけー?」

「あれ、呼んだっけ?」

ミスト。お前、またかよ。咲も呆れてこめかみを押さえている。

「しっかりして欲しいしー私も混ぜてよーみたい」

旧知の仲とばかりに私の隣に座ったヨシュノは、バイオリンケースを肩からさげ隣の空席に置いた。

右手を挙げ、にこやかにバーテンダーへ注文する。

「鳥の照り焼きと軟骨の唐揚げとシーフードドリアと牛筋の煮込みとエビチリと豚の串焼きとサンドイッチ全種と馬刺しと刺身の盛り合わせをお願い!」

「多!?え、お前それ全部一人で食うのか?」

ヨシュノは、何当たり前の話をしているんだコイツはと言った目をしている。なんだかムカつく。

「私って下戸だしー。麦酒一口で吐くみたいな感じで食べる専門みたいなー」

分かる分かると海老の殻を頑張って剥いている咲はコクコクと頷く。

よく考えたら咲はともかくヨシュノは未成年っぽいし当たり前か。
まあ、私もだけど。それにしても料理のレパートリー豊富だなここ。

「レオっちって一口飲むたびに背中を気にするタイプだったりするわけー?」

「・・・・・・悪いかよ」

そうでもしないと生き残れない。

「別にー。でも今日ぐらいは安心してだしー。敵が来ても私が守るからみたいな」

ガキに言われるなんて私も駄目だな。

「私、まだお前を信用したわけじゃないから」

下手な馴れ合いはもうごめんだ。

「あはは。レオっちってツンデレ〜」

「ツンデ・・・・・・インドラの親戚か?」

「あ、料理きた。いただきまーす!」

聞けよ!!・・・・・・あーくそ、折角のアイリッシュが冷めちまった。

「ラムのおかわり!」

ミストは狂ったように笑っている。焦点はとっくの昔に合っていない。咲は、それもいつも通りと海老を剥きつづけ、

「あげる」

「どーも」

なんか疲れた。

私は海老の身を咀嚼しながら、首の骨を鳴らす。

「うん。美味い」


コキリと良い音がした。

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