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独楽回し途

「レオ!」

店を出て間もなく咲に呼び止められた。
仕方なく私は足を止める。

「主様がコレを」

渡されたのは4つ折にされた紙切れ。

「歩きながら話そう」











「魔導計画?次世代軍事戦略として日本が発案した都市伝説じゃないか」

義眼による映像処理。

神経組織の光速可。

脳の未使用領域の可動。

筋肉の抑制破壊。

人間の『枠』を越えた化け物を作る為の最低最悪の計画。

「だけど、質と量で考えるなら簡単なのは後者だ。だから都市伝説なんだろ?」

1体の化け物を何億もかけて作るより、100人の兵を揃える方がよっぽど簡単だからな。

結局計画は破綻。

地下都市計画と一緒に政府が表から消したって聞いたけどな。
すると、咲は無表情のまま淡々と言う。

「『上』から零れた残骸の情報を『赤枝』が拾ったらしい」

「脳みそを親の腹の中に忘れた屑マフィアが?」

サウスブロックでそこそこの規模を持つ戦闘狂の集まり。

「情報屋と仲良しっていうのは便利だな」

何気なし呟く。

咲は溜息混じりに、

「そうでもない」

私はゆっくりと、悟られ無いように銃のグリップに手を伸ばす。

「咲。わざわざ人気をなくした場所に私を連れてきた理由は?」

目測で道幅は10メートル以下。両脇には建物がズラリ。

「うむ」

咲はキョロキョロと辺りを見回し、

「主様を助けて欲しい」

私と同時に、隣の窓無しの廃ビルにダイブする。

ビス!!

私が1秒前にいた場所に、弾丸が撃ち込まれた。
コンクリートの地面に深々と突き刺さる。

「私を巻き込んだのか?」

「違う。これは必然」

私の怒りも受け流して咲は首を横に振った。

「データの残骸は幾つかに別れている。レオにも依頼が来る」

「にも?」

足音が十重二十重に近付いてくる。

「ホズ常連の『何でも屋』の幾人かが行方不明になった。その全員が気合いが入った顔で買物に来たよ。その中の1人がこっそり言ったんだ。『大きい仕事がきたんだ。赤枝からね』ってね。偶然にしてはうますぎるだろ?」

咲はキリスト信者が胸の前で十字を切るように九字を結ぶ。

矢継ぎ早に組まれていく手印は咲の戦闘への序曲。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前。・・・・・・我、戒めを解く。されば我に天神の加護を」

咲は柄を右手で握り、鋼の刃を抜く。煌めく殺人の軌跡は、湖に映る三日月のように美しい。解き放たれた刀の名は、『雷華掃総・ライカソウソウ』。ミストさんのオリジナルの打刀だ。

刃長82センチ。反り2センチの八重造り。私のP226と同じ、咲の相棒。

「これ以上常連を失うのはよくない」

「まて、それは私を助けるって意味か?」

冗談じゃない。

「私はね、確かに人殺しはしない。けど」

腰に吊したホルスターからP226を抜き、銃身をスライド。初弾を薬室に送り込み、構える。

「私の生を邪魔する奴らは遠慮無しに殺すよ?」

私の装備は、P226が1丁と、小口径の回転式拳銃が1丁、腰に手榴弾が3つとスペアマガジン4本。右足の付け根、背中のシースにナイフ3本とEt cetera。

後数分もしない内にココへ突っ込んでくるだろう。
あれ?でもなんで私が?

「あいつらは仕事を頼む。成功しても殺す。断っても殺す。レオが死んだら主様が困る。私も困る」

「はいはい。私はお客様だもんねー」

「違う」

咲はジッと私の目を見詰めた。



「大切な友達」



世界で1番縁の無い言葉を、はっきりと私に告げた。

「・・・・・・涙?」

「あ、え?馬鹿野郎!これは汗だよ汗!!」

ゴシゴシと目元を拭う。泣いてないからな!!笑うんじゃねえ!!

「・・・・・・早く終わらせて帰るぞ」

「了解」

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あきゅろす。
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