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独楽回し開


「そのかわり、宣伝用に誰か殺して?」

体が勝手に動く。つまりは凍える激昂。

「ここは私のお城よ?」

私はミストの手から奪い取ったナイフの切っ先を、そのままミストの首筋に当てた。後4o押せば皮膚の弾力を突破し、肉が裂けるだろう。だというのに、奴は穏やかな微笑をしたままだった。

わかるからだ。それが実現したら私は死ぬと。

「主様への危害は許しませんよ」

今までずっと黙っていた店員供が拳銃を握り、銃口を私に向けていた。扇状に配置付き、それぞれ頭・胸・脊椎・太股と別々の場所を狙っている。

1人だけ喋ったこの20代前半の女だけは日本刀を構えている。利口にも、私がミストにしたように首筋に刃をそえて。肌に鋼鉄の冷たさを感じても、私の怒りはおさまらなかった。

こいつは布都咲(ふつの・さき)。

日本人なのに日本人離れした雪みたいに白い肌に、墨みたいに黒い髪と両極端な2色で構成された、まな板女。切れ長の眼が、クールの内側から隠しきれない激情を溢れ出している。

通り名は、『侍(ソード・マスター)』。接近戦において負け無し。この店最強のトラブルバスター。

だからどうした?

「邪魔だよヒッポリュテ。胸まで削ぎ落として犬になるだなんて殊勝なこった」

「なんだと・・・・・・!」

「喧嘩はしないの」

我が子をたしなめるようにミストが咲の頭をポンポンと叩く。おいやめろ動かすな刀がまだ首筋に当たってんだよ!

「ですが、こいつは主様に刃物を!」

「レオは天秤に自分の命が乗らないと殺しはしない。そうでしょ?」

「分かっててからかうの本当にやめてくれない?」

「・・・・・・お戯れも程々になさいませ」

咲が納刀すると他の店員もならって銃を収めた。やっと楽に呼吸ができる。

「冗談なのに〜。レオったら本気にするんだから」

ハイと、ミストからデリンジャーを渡される。

「これはね、ミストルティンの槍なの。持つと必ず誰かを殺さないといけなくなるの」

「盲目の神を騙したのはロキだろ?槍自体が悪いんじゃない。私が光の神を殺してなんになる?」

「さあ?どうかしら」

相変わらずな性格。さすがミストだよ。

「今日飲みましょうよ。お詫びに私が奢るわ」

・・・・・・まあ、悪い奴じゃないな。

「咲も来いよ。テメエには散弾が撃てるリボルバーが有るのを証明してやる」

「言われなくても主様の護衛としてついていく。あと私に出鱈目を言うな。散弾が撃てるリボルバーなんてあるわけない」

「咲。サンダーファイブって立派に微妙だけどあるわよ?」

「ええ!?」

こいつは刀と和菓子以外の知識は無い。

私はナイフ1本分を値段を払ってから店を後にした。

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あきゅろす。
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