十人十色
狡い色
「さて、これで一人になったわけだ」
ポツリと、私、流皆は誰もいなくなった教室で呟く。一人なので返ってくる言葉はない。
独りだと、やっぱり寂しい・・・・・・かな? ふん。私も贅沢な悩みを持つようになったものだ。
「遅いなぁ」
椅子に座ったまま、机の上で両腕を組んで、その中心に顔ごと埋めるように片方の頬を当てる。
(分かっているさ)
これは全部全部私の勝手で、届いてるか不明な一方通行で、きっと無意味に終わる下らない行動。
(なにを期待している?)
瞼を閉じて考える。
(なにが望みだ?)
少し眠い。
(わたしは、わた、し、は・・・・・・)
いつしか思考はまどろみ、私は眠りについていた。
記憶。
昔の出来事を夢として見る。
小学生の頃、私には好きになりかけていた男子がいた。
けど、そいつには別の小学校に、付き合っている女子がいた。
テニスの公式試合で私に負けた腹いせに彼氏に頼んだらしい。
『あいつに恥をかかして』
私は、はじめ、気安く話しかけてきたあいつが気にくわなかったが、だんだんと親しくなっていき、好きだと自分の胸の想いを打ち明けたとき、言われた。
『 』
確か、誰がお前と付き合うかよ。みたいな言葉だった。酷すぎて思い出したくない。
気付いたときには、京子の家まで走っていて、彼女に泣きついていた。
私の話しを聞いた京子は、あの最低野郎を殴りにいって、実際に殴ってボコボコにしていた。
次の公式試合で、最低彼女の方を私はボコボコに負かした。
あれ以来だったな。私が父親以外の男を信じないようになったのは。
そんな、八つ当たりにも似た私の棘を抜いてくれたは、
「おい、・・・みな」
手をアカく染めてまで助けてくれたのは、
「るーみーなー!」
肩を揺すられる。瞼を開くと、
「あっ」
火墨がいた。
制服がよれよれだ。
顔を見ると、どうやら怒っているみたい。
「これ」
火墨が持っているのは、先生に内緒で装備している携帯電話。
私は京子と話しをする前にメールを打った。
「一緒に帰ろうって、・・・・・・なんで途中で帰らなかったんだよ?もう7時だぜ」
「そんなに寝ていたのか」
欠伸してテキトーにごまかそうとしたけど、火墨は睨んだまま。
「お前は、待っててくれただろう?」
「えっ・・・・・・あ」
思い出したのは、あの日の事。
困ったように火墨が笑う。
「狡いな。それを言われたら、反論出来ないだろ」
「なら、するな」
椅子から立ち上がる。
「帰るぞ」
「うん」
私の後ろを、笑ってついてくる火墨。
(さて、どうやって次のデートに誘おう)
もう痛くない。
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