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十人十色
願い色

部活のテニスが終わり、時刻は6時40分。


それは、何気ない。たまたま教室で二人きりだったとき。

「ところで京子。そろそろ京介とはキスしたのか?」
「えっ!?」

流皆からの突然の問に、私、蒼咲京子は困惑し、赤面する。だって、思い出してしまったのだ。

昨日の出来事を、

彼の、唇を、

『だったら、ドキドキしたら恋人なんだよな?』

きょうちゃん。

「なんだ、したのか。いつだ?昨日か?」

どっきーん!心臓がドッキンドッキンと不規則に高鳴る。

「な、なんでわかっ」

言いかけ、閉じる。
自ら墓穴を掘ってしまった。わ、私の馬鹿〜。

「ふーん」

ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべる流皆。こ、こいつ。明らかに私の反応を見て楽しんでいる。

反撃だ。

「そういうお前は、火墨君とはどこまでいった?」

さあ、狼狽しろ。

すると、流皆は自分のお腹を愛おしそうに摩る。


「・・・・・・女の子だって」


「嘘ー!?!?」

「嘘だよ」

馬鹿を観察する目で見られた。

「ぐ、ぬぬ」

悔しいが、流皆の方が一枚も二枚も上だ。

「ふっ。おめでとうと言っておこう」

「・・・・・・どうも」

全然嬉しくない。

「しかし、初めは驚いたな。京子が二重人格だったなんて」

「二重人格じゃない!」

「似たようなものだろう。・・・・・・きょうちゃん」

「絶対に誰にも言うな」

不覚だ。まさか、流皆に見られるなんて。

「脅しなんてしないよ」

・・・・・・悪い奴じゃないんだけどね。

「ただ私の事を敬意を込めて流皆様と」

前言撤回。

「ふん。私は帰るぞ」

鞄を持って、私は教室を出る。流皆はヒラヒラと手を振っていた。
これ以上教室に残って、なにをするつもりなんだ?
まあ、私は帰るので確かめることは出来ない。

「さようなら」

「また、明日」

廊下には誰もいなかった。本当は、きょうちゃんと帰りたかったけど、部活の野球があるから叶わない。

夜になったら、電話をかけよう。話したい事が沢山ある。

「早く部活終わらないかなー?」

せっかく彼が頑張っているのに、こんな願いを持つのって駄目かな?





「たまになら、良いよね」

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