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十人十色
のち、眠り色
たまに、思う。なんで、私は火墨のことが好きなんだろう?

明るい性格の男子は嫌いな筈なのに。
あんなお調子者で、馬鹿で、軽い奴で、私の嫌いなモノで構成されているような大馬鹿なのに。

(なんでだ?)

今は午後の授業中。つまらない数学。教科書を見れば分かる簡単な公式を、先生が説明するのが下らない。
(分からない)

ゆえに、私、流皆の思考は、冒頭の問に没頭していた。
(難問だ)

火墨を見ると、あいつは真面目にノートをとっていた。いや・・・・・・違う。あの手の動きは、パラパラ漫画を書いていた。
満足そうにニヤついている。

(この馬鹿野郎)

あれで頭が良いのだから、もっとムカつく。

「白神。この問題を解いてみろ」

「はい」

思考を中断して、私は黒板へ向かう。
チョークを手に取り、問題を解く。

「正解だ。ここのXの値は教科書でいう23ページの公式の応用で」

また、くだらない解説が始まる。

キーンコーンカーンコーン
「よし。じゃあ今日はここまで」

ようやく、終わった。・・・・・・眠い。次の授業が始まるまで、寝よう。

「流皆〜」

火墨が笑顔でこっちに近づいてくる。私は顔を背けたが、あいつは先回りして、

「なあなあ、このパラパラ凄くない?俺の力作」

などど、私の眼前に、パラパラ漫画を出して、パラパラさせる。

「つまらない。睡眠の邪魔だ」

「え〜、結構面白いと思うんだけどなー」

「あっちいけ馬鹿」

クラスの奴らの視線が幾つか集まっている。あ、良子!こっち指差してイヴになにを言った!
恥ずかしい。注目されるのは嫌いだ。


「・・・・・・眠いんだよ。話は後で聞いてやる」

これぐらい妥協すれば火墨も自分の席に戻るだろう。
「仕方ないな〜」

ほらな。馬鹿が一匹。

「なら、次の授業中にもっと面白いパラパラ漫画を書くとしよう」

「授業開始3分から終わりまで使って、あの程度じゃ、高が知れている。今度はせいぜい何度も書き直さないようにするんだな」

「えっ?」

ピタリと、火墨の言葉が止まった。

「どうした?」

「い、いやー。その」

火墨は照れくさそうに、頭をかく。

「流皆が、そんなに俺のことを見ていたんだと思うと、嬉しくて」

「なっ・・・・・・」

何たる墓穴。体が急激にほてる。
暑い。熱いアツイ!
私は顔をふせて、寝たふりを決行する。

「おやすみ。流皆」





・・・・・・馬鹿。

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あきゅろす。
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