十人十色
ドキドキ色
私は蒼咲京子(あおざき・きょうこ)。中学2年生。髪は短く切り揃えている。身長はあるけど、胸が皆無。たまに小学生に間違われ、泣きたくなる。
特技は剣道。実は家が蒼咲流剣術の本家で、母は免許皆伝。私も昔から剣の使い方を教えられている。
かと言って、部活ではテニスをしている。型に嵌まった学校程度の剣道で、私を倒せる相手がいないのだ。
ここは、学校の校門。雨が降ってコートが使えず、今日の部活は休み。
「ばいばい」
「また、明日ね!」
友達に挨拶を告げ、帰路に着く。
そこへ、
「おーい、京子〜」
私を呼ぶ声。
「遅い。・・・・・・待ってたんだからね。京ちゃん」
彼は紅咲京介(こうざき・きょうすけ)。昔からの幼なじみだ。
「・・・きょうちゃんはやめろよ」
「え〜。折角の二人きりなんだよ。いーや」
ぷいと首を振る。ずっとずっと、きょうちゃんと呼んでいたのに、今から変えるなんて嫌!
これが一番良い。
「仕方ねえなー」
観念してきょうちゃんは私の隣を歩く。ふふん。
だらし無く私は笑ってしまう。
だって、一緒に帰るなんて本当に久しぶりだった。
中学校に入ってからは部活で帰る時間がバラバラになっちゃっただもん。
「体育でね、皆とバドミントンをね」
次から次へと言葉が出る。沢山きょうちゃんに聞いてほしい。
「俺は野球してさ、それで初めのボールを・・・って、雨あがったな」
ふと、思う。楽しそうに会話をする私たちは他の人から見たら、どんなふうに映っているんだろう?
(仲の良い友達?それとも恋人?)
恋人?
(なのかなー?)
イマイチ分からない。恋人の基準ってなに?ドキドキしてキャーなの?でも、きょうちゃんにどんなことしたらドキドキするんだろう?
今はドキドキしていない。きっとお風呂に入っても恥ずかしくもなんともない。だって小学生まで一緒に入ってた。
じゃあ、手を繋ぐ?
ギュウ。
「良いよね?」
「お、おう」
やっぱりドキドキしない。
「ねえ、きょうちゃん。私達って恋人なの?」
「うえっ!?」
きょうちゃんは思いきりビックリしていた。
「お前は、どっちだと思う?」
「ドキドキしないから、まだ恋人じゃない」
「だったら、ドキドキしたら恋人なんだな?」
「うん―」
そうだよ。とは言えなかった。だって、
私の唇がきょうちゃんの唇で塞がれた。
(♪♂×%*☆&¥∞!?)
混乱する思考。加速する心臓のリズム。
離れた、きょうちゃんの唇が言葉を紡ぐ。
「ドキドキした?」
「・・・・・・うん」
それ以外の返事が分からない。
ドキドキって、こんなに、
暖かい。
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