十人十色 衝撃(小)色 最近。私、流皆は、火墨の顔をまともに見る事が出来ない。ちょっとでも目が合うと、すぐにそらしてしまう。 嫌いだからじゃない。好き過ぎるから。 私にこんな乙女要素があったなんて驚きだ。 おかげで体育のバスケに集中力が全然わかない。体育館を2つに別けて男女に別に試合をしているのだが、 「あ、すっごーい。火墨君またバスケ部相手に勝ってるー」 「うわっ。こんどスリーポイントから入れた」 少し耳を傾けるだけでこれだ。 火墨はスポーツ万能だ。うん。それは知っていたから構わない。 けど、だからといって一々私の方を見るなー!い、一様付き合っているのは秘密なんだぞ!ばれたらどうする!? 「ほほう。流皆の旦那様はまた随分と活躍していますな〜」 京子め。 「ふん。私には関係ない」 試合のローテーションが回ってこない間は壁際でテキトーに暇潰しをしている。ほとんどがお喋りだ。 「流皆は最近変わったよ。私が言うのもおかしい話だけどさ。雰囲気が柔らかくなった」 「なっ」 何を急に!? 「そんなに照れないでよ」 「誰が照れて・・・・・・!」 「京子ちゃーん流皆ちゃーん。試合始まるよー!」 「急いで下さーい」 良子とイヴの声がコートから響き、私達は会話を中断する。 (雰囲気が柔らかくだと?) 私は思考までは中断出来ずにいた。 確かに私は友達以外、とくに男子とは会話すらしていなかった。 でも、最近の学校生活を思い返してみればどうだ? (いやいや。歩とゲームの話をしたのは単純に好きなキャラが被ったからでそもそもあいつは流皆の友達だしだから) 全然集中出来ない。 「流皆ちゃん!」 「えっ」 ゴツン! 「あお!?」 視界が急に狭まったかと思えばそれはボールで、私の頭に激突。 脳が揺れ、私の意識はぼんやりと溶けだす。 「流皆!流皆!!」 誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。 「う、ううん?」 気が付くと私は保健室のベットに寝かされていた。 上半身を起こすと、 「流皆!良かった〜。気分は大丈夫?どこか痛くない?頭の調子はどう?」 椅子に座っている火墨が私の目に映った。 「一度に質問するな。・・・・・・大丈夫だよ」 「そっかぁ。良かった」 火墨の心の底から安堵したような顔がくすぐったくて、嬉しかった。 「なあ火墨。私、変わったかな?」 「変わったって?」 「そ、その、雰囲気とか」 「うーん」 火墨は僅かの間考えて、何故か私の頭を愛おしそうに撫でた。 「俺はどんな流皆でも大好きだよ」 心のゲージが一瞬で沸点を突破した。 「そんな話をしているんじゃない!」 火墨の肘を、あの叩くと急激な痺れを発する部分を拳で叩く。 「いい・・・・・・!?」 火墨が悶絶している間に私はベットから降りて保健室を出た。 「あら、もういいの?」 「そこにいたんですか」 何故、保健室の先生が外で待機しているんです? 「だって良い雰囲気だったから。ねっ?」 余計なお世話です。 私は小走りで階段を駆け上がった。 「・・・・・・火墨の馬鹿」 [*前へ][次へ#] [戻る] |