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十人十色
快晴色
「びっくりしたよ〜。イヴちゃんってお金持ちだったんだね」

その言葉に、私、イヴはショックを受けました。良子さんに悪気あったのではないと理解しています。しかし、しかしです。
私にとってその言葉は、嫌な思い出しかないのです。実は、転入した理由も、そこにあります。
前の中学校で、私は皆から『お金持ちのお嬢様』と評されていました。誰も、私を見てくれない。見るのは私の家柄と、見返りばかり。
うんざりでした。息の詰まる想いでした。
外国には家柄に相応する特別な学校もあります。でも、私は信じたかった。この世の中には本当の私を見てくれる人がいるんだと。

(それが良子さんだと思ったのに)

明日から、良子さんはどんなふうに私を見てくれるのでしょうか?

「イヴちゃん?どうしたの?」

「えっ。いえ、なんでもありませんわ」

ここは私の部屋の一つです。日本風に靴は脱ぎます。資料で勉強した『普通の女子中学生の部屋』を作って貰いました。
テーブルの上に出されたイチゴのショートケーキを良子さんは美味しそうに食べています。

「ふーん。あのね、話しの続きなんだけどテニス部では夏休みに合宿があるんだ。練習いっぱいだけど夜は」

良子さんとの会話は楽しいです。とっても新鮮で、心があたたかくなります。
こんな小さな幸せさえ無くなると思うと涙が出そう。

「でも、びっくりしたなー。イヴちゃんってお姫様だったんだ」

やっぱり。良子さんも私の事を・・・・・・あれ?

「おひめ、さ、ま?」

「違うのー?」

私は自分の耳を疑いました。

「こんな大きな家だから、てっきりお姫様だと思ったんだけどなー」

良子さんの笑顔は、とっても眩しくて

「あの」

「なに?」

初めて会ったときと同じ純粋なままで、

「私達は、その、・・・・・・友達ですか?」

クリームの付いた頬っぺたが愛らしくて、


「うん!」


思わず、

「良子さん!」

「はう」

抱き着いてしまいました。体勢が崩れ、良子さんを押し倒してしまいますが構いません。心の想いを表現します。

「良子さん良子さん良子さん良子さん良子さん〜!」
ああ、やっと出会た。こんなにも嬉しさが溢れたのは何年振りかしら。

「お嬢様〜。紅茶のお変わわわわわわわ!し、失礼しました!私は何も見ていませんのでごゆっくり!!」

「はっ!ち、違うんです絵理!誤解です〜!」

部屋から飛び出し、私は絵理を追い掛けます。

「ふええ」

「良子さん」

扉を閉じる直前、放心状態になっている良子さんに私は、

「大好きです」

そう言って、走り出します。

心にあった不安という暗雲は消え、今は、

(ああ、駄目。嬉しいって気持ちが弾けそう!)

素敵な快晴です。

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